Haru:「久しぶり」-1
11時を過ぎた頃。
受験勉強漬けになってから、もう大分時間が経った気がする。
勇樹と最後にセックスをしたあの日も、大分前のことのように感じるなぁ…。
大学受験のための書類を受け取りに、夏休みの学校に来ていた。
高校生最後の夏も、勉強漬けで終わってしまうのかと思うと、憂鬱で仕方がなかった。
担任から、書類を受け取って帰ろうとしている時に、プールの方をふと見ると、勇樹が女子更衣室から出てくるところが見えた。
「え、なんで…?」
勇樹が本当はすごく変態だってことは、私には分かっていたけど、さすがに女子更衣室で何かをするような真似はしないと思っていた。
まず、状況を把握するために、勇樹の様子をしばらく窺うことにした。
勇樹は、近くにあった掃除用具入れから、デッキブラシやら、掃除中の看板を取り出して、入口付近に並べている。
辺りを注意深く見回して、ドアを閉めないまま、女子更衣室に入って行く。
「(ははぁ…これはもしかして。)」
勇樹は、面倒くさがりな性格だが、性欲のことになるとすごくまめなところがあることは知っていた。
勇樹の成績は、全教科平均より少し上なくらいなのだが、以前保健体育、それも性に関する分野で97点を取ったこともある。
掃除中の看板を出していたところを見ると、これもきっと勇樹特有の”雰囲気作り”の一環なんだろうと、なんとなく解釈した。
でも、さすがにドアを開けっ放しにしているのは、堅実な手段を常に選ぶ勇樹らしくもないと、疑問に思いながら、こっそりと更衣室へと私も近づいて行くことにした。
性欲に関することにぬかりのない勇樹の目を掻い潜り、更衣室を覗くことは、さすがの私も神経を使った。
何やら話し声がするが、あまり穏やかな雰囲気ではなさそう。
少しだけ、更衣室の中へと視線をやると、どうやらシャワールームに勇樹はいるようだった。
カーテンの隙間から見える、胸の大きくて程よい肉付きをした女の子が勇樹の下敷きになっている。
あの体付きは…やっぱり瑠奈だったのね。
瑠奈以外の子にもエッチなことをしていたら、私は勇樹のことを浮気とみなして別れようと思っていたけど…。
私が知る限り、瑠奈ほど高校2年生の中で男子の性欲の的になりそうな体付きの子は、他に知らなかった。
瑠奈が、高校生の制服を着て、歩いている、ただそれだけで健全な男子生徒は、瑠奈の体でいやらしい妄想を無尽蔵に繰り広げて行くでしょうね。
勇樹が、そんな子に早々飽きたりするはずがない。
そう、勇樹の誕生日プレゼントに瑠奈の体をセックス以外好き勝手にする権利をプレゼントしたのは私だった。
勇樹も薄々それに気付いていただろうけど、目の前でオナニーしていたら、そんな冷静に考えることもできなくなるか…。
私は、瑠奈とも関係を持っていた。
1年前、文化祭実行委員だった浩人を好きだった瑠奈は、より距離感を近づけるために、自分も文化祭実行委員に立候補した。
私は美術部だったので、文化祭の看板作りや、装飾をやっていたので、実行委員の人と関わることも多く、この二人と知り合ったのもそれがきっかけだった。
瑠奈は、私の作業を良く手伝ってくれたこともあって、そこから仲良く話すようになった。
その当時、瑠奈が好きだった浩人のことで相談にも乗ったことがある。
そこから晴れて、瑠奈は想っていた浩人と付き合うことになった。
しかし、後で私たちの学年の間でも、浩人は有名な女たらしだという事にを私は知った。
そして、瑠奈もその被害者の一人だった。
特に瑠奈は、抜群のプロポーション故に、どうにかして浩人は瑠奈を性行為に持っていきたかったらしい。
別れた後で、瑠奈は私に相談をしてきた。
瑠奈はずっと、葛藤していた。
自分が、浩人との性行為を素直に受け入れられれば、浩人は自分を好きでいてくれたのかもしれないと。
そして、瑠奈は浩人が付き合ってすぐ、何かと体を求めようとしてきたことから、戸惑いを感じていた。
瑠奈は、純粋に浩人が好きで、浩人もその想いに答えてくれたからこそ、付き合ってくれたと思っていたはずなのに、浩人の心は瑠奈の体にしか関心がなかったのだ。
私も、勇樹と付き合う前に似たような経験をしたからこそ、瑠奈の気持ちは痛いほどわかった。
瑠奈の気持ちを理解できた私は、現実が非情であることも知っていた。
そういう男は、肉体をキープするだけキープしておいて、他にもっと好きになれる女を探すという事を。
で、都合良く呼び出したりして、体だけちゃっかりとしゃぶりつくして、都合が悪くなると、何事もなかったかのように捨てる。
過去の自分がまさに目の前で苦しんでいるような気持ちになった私は、瑠奈を放っておくことはできなかった。
自分の事を責める必要なんてない、瑠奈は間違っていると私は思わなかった。
浩人という男と別れたことを、自分のせいにして欲しくない。あなたは、ちゃんと魅力的な女の子なんだよ。
私の自己満足な思いから、瑠奈との関係は始まった。
瑠奈の髪を撫でたりしていくうちに、抱き合ったり、キスをしたり、私の瑠奈への愛情表現は、止められず、エスカレートしていった。