「どうでもよくないこと」-4
「な〜、本当はリナちゃんずっと泣きたかったんよな。」
あんたに何が分かるんだよっていう気持ちと、そのとおりだよバカヤローって気持ち。
彼はあたしに胸を貸してくれて、大通りなのにずっと、小さな子をあやすように背中をたたいてくれた。
彼は何も言わない。
どうした?とか大丈夫か?とか。
でもあたしもその質問をされてもきっと答えられなかっただろう。
たぶん、たくさんの人にあたしたちは目撃されたと思う。
でも、あたしにはそんなことはどーでもよくて、今胸を貸してくれるこの人がすべてだった。
どれくらい泣いたかわからない。
あたしが泣きすぎてしゃくり上げだし、彼はティッシュを相当使った頃にあたしはやっと顔を上げた。
しばらく彼の顔を見つめた。あたしを抱き締めてくれた彼の存在が不思議だった。
やわらかい唇があたしの唇に触れる。
ほんの一瞬。
やさしい唇。
「泣いてもいいおまじない」
彼は言う。
あたしはこの瞬間、彼に恋をした。