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愛すべき彼女と肉塊
【学園物 官能小説】

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Runa:「優しさの呪い」-3

駅の改札を出て、ようやく人ごみから解放された。

走ったせいか、蒸し暑くて汗が制服に滲む。

「大丈夫?瑠奈ちゃん?」

勇樹は自分の傘を広げて私の様子を窺うように聞いてきた。

「うん。大丈夫だよ。」

私も持っていた傘を広げて、学校の方へと歩き出す。

しばらく無言のまま、学校へと歩きながら電車でのことを思い出す。

中年男が指を噛まれた時の苦痛の表情。

ていうか、指を噛むという発想にまで至らなかったので、私は正直驚いていた。

よくよく考えると、痴漢の指を噛むって一体何?

冷静になって考えるほどおかしくて笑ってしまった。

「ぷっ…指を噛むって変だよ…。あはははっ」

「俺、瑠奈ちゃんの隣の車両に乗ってたんだよね。なんとなーく、車内を見回してたら、瑠奈ちゃん見つけてさ。声かけようと思ったら、痴漢にあってるし、どうしようとか思ってた。でも、普通に嫌がってたみたいだし、瑠奈ちゃん泣きそうになってたからちょっとムカついてね。痴漢なんてできないような指にしてやろうって咄嗟に噛んだんだ。」

と勇樹は得意気に話している。

「痴漢は嫌かな。しょっちゅうあったけど、あんな酷いこと言われたのなんて初めて。怒りを通り越してどうすればいいのかわからなかった。」

思い出すだけで腹が立ってくる。

でも、勇樹がいなかったら、私はきっと最後まで言い返すことはできなかったし、ホント1日最悪な気分だったと思った。

「私、実は勇樹くんが隣の車両に乗っていくの、見てたよ。」

と言うと、

「えっ、知ってたの?言ってくれればよかったのに。」

勇樹はせっかく連絡先交換してるんだからさ!と、自分のスマートフォンを私に見せる。

「なんか、一緒に電車乗っても話すことないかな、とか思っちゃってさ。でも、こんなことになるんなら、勇樹くんと一緒に居ればよかった、なんて思うよ。」

これは本心だった。私は、もうこの人に散々恥ずかしいところとか、親も知らないようなところを見られているはずなのに。

一緒にいる時間が苦痛だとか、そういうのは大した問題ではないのだと、思った。

「瑠奈ちゃんを喜ばせる痴漢なら、俺は止めないけどね。嫌がってたら、俺は止めるよ。」

私が気持ち良ければ、この男はなんでもいいのかと呆れたが、勇樹はいい意味で自分に嘘を吐かない人間だな、と少し感心した。

「まぁ、勇樹くんは私にしょっちゅう痴漢より酷いことしてるけどね。」

と嫌味っぽく言うと、「俺を痴漢と一緒にしないでよ〜!そういうこと言うなら、瑠奈ちゃんが痴漢にイカされちゃうまでずっと見てて、イキ顔写メってやればよかったな。」

と憎まれ口を言う。あんな痴漢じゃさすがに物足りないな、と内心思いながら、

「嘘だよ。ホント、助けてくれてありがとうね、勇樹くん。」

と彼がよく口にするありがとうに倣う。

「お礼に何でも言うこと聞いちゃう?」

「うん!」

「言ったね?」

「あっ…違うの!今のはよく考えてなくて!」

しまった。会話の流れで「うん」と相槌を打ったつもりだったのに、私は彼のゲスな行為の約束に返事をしてしまったらしい。

「じゃあ、放課後体育倉庫来てね。」

そう言い残し、彼は別の校舎へと去って行った。

「違うのに!!」

私は彼の後ろ姿にそう叫んだが、彼は無邪気な子供のように「また後でね」とひらひら右手を振るだけだった。

放課後になり、勇樹から携帯にメッセージが届いていた。

「瑠奈ちゃん、授業終わった?早く瑠奈ちゃんに会いたい♡」

溜め息しかでなかった。これから彼にまた好き放題されるのかということと、第3者から見れば恋人と誤解されかねないような文章を送ってくる彼のことを考えると頭が痛くなってくる。

とにかく、無理なお願いはきっぱり断れば勇樹も分かってくれると、思い体育倉庫に向かった。

なにはともあれ、助けてもらったのは事実なのだから。

「や、お疲れ!」

体育倉庫に入ると彼は体操用の分厚いマットの上に腰掛けていた。

彼の座るすぐ横には、何やらコンビニで買ったと思われる飲み物が2本入っている。

「座ってよ。」

と言われ、私は彼の横に腰を落とした。

「ねえ、どんなお願いでも聞いてくれるんだよね…?」

と彼は私の肩に手を回してそう尋ねる。

「助けてもらったから…私ができる限りのことはしてあげたいけど…。何をすれば…。」

自分で言ってて、辛くなってくる。彼の見返りは十中八九私のこの体のことなのだから。

それを分かった上で言わされるのは、ただの罰ゲームに近い。

すると次の瞬間、彼は私の肩を強く握って、力を込めて私を後ろへと倒した。

「いやっ!何!?」

彼に押し倒されることはしばしばあったが、彼にしてはいささか乱暴で驚いてしまった。

彼は私の体に体重をかけないように被さり、左手で胸を触ってくる。

「瑠奈ちゃんとセックスさせてよ。」

彼の表情は、いつにもなく真剣な表情で、そのまま私の唇にキスをする。

「いやっ!こんな所で何考えてるの。彼女と別れてもいいの?」

私は力いっぱい彼の体を押し返す。

彼はしばらく何も言わなかったが、その後、私は彼の右腕で、両手を動けないように頭の上で交差させるように抑え込まれてしまい、左手でそのまま胸を触られている。

ついにこの日が来てしまった。私に都合良く貸しを作って合理的に行為に持ち込む。

シンプルにして、最もオーソドックスな展開。

「結局そうなっちゃうんだね…。」

他の男性とはちょっと違う、彼にそう思っていただけに、犯される嫌悪感より、一人の人間に裏切られたのだと、失望した。



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