俺のラブストーリー〜出会い〜-1
ある友達は俺を笑った。
またある友達は俺を哀れんだ。
そしてまたある友達は俺に同情した。
それは結果的に言えばそんな事は俺からすればどうでもよかった。
誰がどう思おうが気にしてなんていられなかった。
何故なら俺は今、人生の中でも最上位にランクインするほど悲しく、またそれに匹敵するくらいの憎悪を自分の中に無理矢理閉じ込めていたのだから…
俺は今、飛行機の中にいる。
その理由は簡単に言えば現実逃避だった。世間一般的に見れば落ちこぼれといわれる部類に入るだろう俺は、今の現実から逃れる方法としてとりあえず、東京という土地から離れる事しか思い付かなかった。
でも海外に行けるほど貯金もないし、馬鹿だから英語も話せない。だから、国内で出来るだけ遠いところへ…自分の事を知らない土地へ行きたかった。
飛行機はその為の手段だった。
機内の中はとても静かだった。飛行機のエンジンの音だろうか…ただ機内にはゴーという音が響いている。俺はそんな中、毛布を頭まで被って目を閉じて胸の中に響く痛みをやり過ごしていた。
それはバイト終わりに友達の家に行った時だった。
その日は大学のレポートの提出期限が迫っていてそいつと一緒にやろうと思っていた。
そんな安易な考えのせいで最悪の苦しみを味わうことも知らずに………
あいつの部屋の前まで来た時、部屋には明かりがついていなかった。てっきり留守なのかと思い、そのまま帰ろうとした。でも、その考えを行動に移す前に中からわずかに声が聞こえた。
(なんだ…いるじゃん)と思い、ドアを開けて玄関に入る。(もちろん、一応ノックはしたが…)すると玄関には女物の靴が置いてあった。
ただそれだけなら俺は何も見なかった事にして帰っただろう。しかし、そうも行かない理由があった。
(これって……)
いっせいに体中の血液が音をたてて引いき、不安が体中を包んだ。
そして…俺はゆっくり靴を脱ぎ、足音を殺して声のする方へ足を進めた。
そして、声の元を見た瞬間のことは忘れたくても忘れられない。
ドアの隙間から見えたのはその友達と俺の彼女の梨佳が抱き合っている姿だった。
あの二人が体を重ねている姿は多分俺という人間の精神と自信を完全に破壊できる最高の武器といえた。それほど…それほど俺はその光景にショックを受けた…
それからの事は何も覚えていない。気がついたら夜が明けていて、いつの間にか自分の部屋にいた。
とりあえず大学に行こうかと思ったが、やはりあの二人と顔を合わせるのが嫌で休んでしまった。
それからズルズルと休みを繰り返し、一週間がたった。その間に何度か二人からメールや電話、自宅訪問などを受けたが全て居留守、無視をしていた。
そして、頭の中は整理されないまま、まだぐちゃぐちゃのままだった。
(なぜ?どうして?)
という問いが頭の中をぐるぐる回るという悪循環だ。
しかし、その最悪な状況を脱する事が出来たのはその日に届いた母からの手紙のおかげだった。それはとても他愛のない内容だった。元気ですか?
ちゃんと食べてますか?
暑くはないですか?
…など本当に他愛のないものだった。
でも、俺はそれを見て涙が溢れた。そして、思った。(このままでは行けない…変わらなきゃ…今のところから出て、また笑えるようにならなきゃ…!)
それは母への誓いであり、なにより自分への誓いだった。