第一話 出会い-1
「暑い・・・。遠い・・。」
街に一軒だけあるコンビへ続く農道をふらふらと歩きながらジリジリと照りつける太陽を見上げながら思わず独り言をつぶやいてしまう。
デザイナーを目指して小さな事務所に勤めだしたまでは良かったんだけど、上司の陰湿ないじめにあいすっかり気付いた時にはすっかり体調を崩してしまいあれだけ苦労してはいった会社を辞め、今は実家のあるこの小さな町で療養中というわけだ。
当初こそ寝たり起きたりの生活をしていたが、最近は体調もすっかり良くなって日常生活には問題がなくなってきた。
ただこうなると、両親の見る目が病人にたいするもではなくなってきて態度にこそださないものの家に居づらくなってしまっている。
そこで今日もたいして用事もないのにコンビニへいくと両親につげこの炎天下のなか歩く羽目になったのである。
そんなことを考えながらふらふらあるいているとふと道端の小さな店に目がとまる。
「懐かしいなぁ・・・。 まだあったのかぁ」
看板もとうにはげ落ちお世辞にもきれいとは言えないその店は、僕が小学生のときによく通った駄菓子屋で学校終わりに先生の目を盗みながらよく通った店だ。
思わず懐かしくなり建てつけの悪い引き戸をガタガタとあけ薄暗い店内に入った。
「おじゃまします〜。」
ぼそぼそとしゃべりながら店内をぐるっと見回してると、ふいに棚の裏から
『おばちゃんはおばあちゃんの病院のお迎えだよ・・・。』
ビックリして声の聞こえた棚の裏に回り込むと、黒のロングヘアの女の子が棚の商品を熱心に品定めしながら座っていた。
「君はここのお店の子??」
無人のお店にいること、そしてどう見ても小学生の女の子が平日の午前中にいることに疑問を感じおもわず聞いてみる。
『ちがうよ? たまたまお店に来た時におばちゃんから店番たのまれたの。 あっそれと
今日は学校は創立記念日でお休みだから』
顔はこちらに向けず熱心に品定めをつづけながら女の子はぼそぼそと答えてきた。 しかもこちらの顔も見ずに思っていたことを見透かしたようにしっかりと学校にたいする補足までつけて。
「そ、そなんだ! おにいさん実家がこっちでむかしこの駄菓子屋によく通ってたから懐かしくてつい入っちゃったんだけど・・残念おばさんいないなら買えるかなぁ」
なんだか小さな女の子と二人だけの空間に耐えられず店を出ようとすると、ふいに後ろから女の子に服の袖口をギュッとつかまれぎょっとして振り向く。
『ねっ おじさんスマホとかって持ってる???』
先ほどは下を向いていたから見えなかったが、袖口をつかみうこちらを見上げてる女の子の顔は猫のような大きな瞳と真っ黒なストレートのロングがとてもよく似合う可愛いというより綺麗という言葉が似合う感じだった。
「ス、スマホ?もってるよ。 な、何に使うの??」
予想以上に綺麗だった女の子の顔に見惚れながらドギマギした心に気付かれないよう返事をする。
『○△□ってゲームやったことある?クラスのみんなが遊んでるんだけど、うちはお父さんもお母さんもスマホじゃなくて・・』
ちょうどそのタイトルは最近遊び始めたスマホゲームのタイトルだったので背中に背負ったバッグからスマホをとりだしつつ、ゲームを起動させ彼女にみせた。
「これでしょ?? 僕もちょうど時間もてあましてるしおばさんにも久々に会いたいしまってる間遊んでもいいよ」
『えっ?? ほんといいの?おじさん やったぁ!!!』
そう答えるのが早いか僕の手からスマホを取り上げ、お店のイスに腰掛け遊び始めた。
「ところで君の名前は?? あとおじさんじゃなくておにいさんがいいなぁ まだ25だし」
彼女の隣のイスに腰掛けながら夢中で遊んでいる彼女の手元を覗きこみながらぶつぶつとさっきから引っかかっていた部分にふれてみる。
『ゆりだよ!ゆり。 あと25はおじさんだよ〜。 まぁでもスマホ貸してくれたし特別おにいさんて呼んであげる♪ 』
「あははは それはありがと。ゆりちゃん。 僕の名前は健司よろしくね。」
もくもくとゲームを続けるゆりちゃんのなんとも現金な答えに苦笑いしながらも自己紹介をすませる。