10歳-7 「冬香〜いい本見つかった?」 いつの間にか近くに来ていた母親の声で我に帰る。 「今日はいい本見つからない。もう帰ろう!」 平静を装って母親と本屋を出る。 一刻も早くこの空間から逃げたかった。 わたしは未だにこの時のことを親に話せていない。 心配をかけてはいけないという気持ちが強かった。 そして「痴漢」という行為をされた自分が恥ずかしかった。