プ-1
あの日から、俺が仕事から帰ってくると吉見が玄関のところで
俺の帰りを待つようになった。
「あのさ、俺がもっと遅かったらどうする訳?」
玄関の前に女の子が長時間いることの気まり悪さと
待たせてしまっている申し訳なさで居心地が悪い。
「だったら鍵頂戴よ」
このオンナは・・・・
遠慮ってもんを知らないらしい。
「知らないオンナに家の鍵は渡せない」
そうため息をついて鍵を開ければコマリが駆けて出てくる。
「おぅ。コマリただいま」
そう声だけかけて家の中に入れば
コマリを抱いた吉見も家の中についてくる。
「そのコマリって名前・・・嫌なんだけど」
「なんでだよ?マリコが飼ってる子犬だからコマリだろ?」
ニヤニヤしてそう言えば
目に見えてふてくされる。
このオンナは・・・きちんと社会人出来てるのか?
「さっさと名前を考えなかった吉見が悪い」
そう言ってネクタイをゆるめながら、冷蔵庫からビールを取りだした。
「じゃぁコマリでいい」
とっくに子犬自身は自分の名前を「コマリ」で認識していた。
「佐藤さん、夕飯は?」
「あ〜?まだ。冷凍庫になんか冷食あるだろ」
そう言って上下のスウェットに着替てリビングに行けば
丁度吉見も洗面所から出てきた。
「・・・・」