Greenroom talk〜楽屋話-1
そこは修平の家のリビングだった。
天道修平は健太郎の親友。中学に入学して大げんかをした後、すぐに意気投合して以来、ずっと大切な友人だった。彼は健太郎の双子の妹真雪とも中学時代から自ずとずっと親しくつき合っていた。
修平はやはり高校の時の同級生、日向夏輝と結婚して、今、この一戸建ての借家に彼女の母陽子と共に暮らしている。
健太郎も高校時代の同級生、月影春菜と、龍もいとこの真雪とほぼ同じ時に結婚して、それぞれ仲むつまじく暮らしている。
「ごめんね、しゅうちゃん、ソファ汚しちゃって」
真雪が申し訳なさそうに言って、濡れタオルで飛び散ったり垂れ落ちたりしていた白い液をせかせかと拭き取った。
「そんなこと、構わねえけどよ」
修平はストーブにケトルをかけ直しながら言った。
「おまえ、龍以外の男に中出しされるの、断固拒否してたじゃねえか。なんでケンタにあっさり中に出させんだよ」
修平は親友健太郎のことを『ケンタ』と呼んでいた。
今まで真雪と熱く繋がっていたその健太郎は、涼しい顔でストーブ横のカーペットに座ってコーヒーを飲んでいた。
「なに爽やかで充実した顔してコーヒー飲んでんだ、ケンタ!」
「えへへ……しゅうちゃん、実はね」
真雪がおかしそうにそう言いかけた時、リビングのドアが開いて、外にいた龍が部屋に入ってきた。
「龍っ!」修平は入ってきた龍を鋭く睨み付けた。「おまえ、何で二人を引き離さなかったんだ? 真雪、ケンタに中出しされちまったんだぞ? しかも三回も、めちゃめちゃたっぷり注ぎ込まれてたじゃねえかっ! 兄妹だったら許せんのかよ」
「まあまあ、しゅうちゃん。落ち着いて」真雪がまた言った。
「軽すぎだろ、真雪っ! こんなことなら俺んち提供すんじゃなかった……」
修平はふてくされたように言い、カーペットにどすんとあぐらを掻いてテーブルのコーヒーカップを手に取った。
部屋に入ってきた龍が修平を見下ろして言った。「修平、俺にもコーヒー」
「へ?」修平は思わず龍を見上げた。「何つった? 龍」
「だから、俺にもコーヒー淹れてくれないかな」
「龍、……おまえ誰だ?」
「気づけよ、いいかげん」立っていた龍――健太郎は笑いながらぽんぽんと修平の肩をたたいた。
「ま、まさか、おまえ……」
修平は慌てて立ち上がり、ストーブ横でコーヒーを飲み干したばかりの健太郎――龍を見下ろした。
「お、おまえら……」
「しゅうちゃん、だまされるの、二度目だね」真雪が愉快そうに言った。「あたしが淹れるよ、コーヒー。ケン兄、待ってて」
「済まないな、マユ」外から入ってきた本物の健太郎は上着を脱ぎながらソファに腰を下ろした。「ああ寒かった」