『Determined Miracle〜藍田咲子の長い一日〜』-7
『笹木達彦』
という文字が見えて、どっと力が抜ける。
進路欄に几帳面な文字で、第一志望から第三志望までがきっちりと書き込まれていた。
そして、それだけ。
その他には何も書いていない。
「何これ。」
「ってか、大学の話してただろ?これ書いた時。お前、違うこと書いたの?」
笹木は呆れたように言った。
そうです。
どうせ私はそういうダメな女です。
なんだか情けないやら恥ずかしいやら疲れたやら、色々な気持ちがごちゃ混ぜになって、とうとう、どうにか耐えていた涙が目からこぼれ落ちた。
「馬鹿だなぁ……」
笹木は徐に口を開いた。
それから私のダッフルコートのフードを私の頭にボスンと被せる。
「お前のが見つからなかったってことはさ、お前の願いを神様が受理したってことだよ。」
そう言うと笹木は、その上から、私の頭をぎゅっと自分の胸に押し当て、抱きしめてくれた。
私の目からは、引力に押し出されるように、余計涙がこぼれた。
かくして、長い私の一日が終ったのだった。
※
その後、見事笹木は地元の国立に落ちて(散々「お前があの俺のボールを拾ったせいだ」となじられたが)、私達は同じ東京の大学へ行くことになった。
「お前、相変わらずトロいなぁ〜」
笹木が正門の前で、今日も待っていてくれた。学部は違うけれど、ほぼ毎日こうやって待っていてくれる。多分、私達は付き合っているのだろう。
「神様が願いを叶えてくれた。」
この結果が出た時、私はそう思って白い社へ行き、お供え物をしてしまった。
しかし、最近思うのだ。
もしかしたら……もしかしたらだけど……
私のあの白いボールを拾ったのは、神様じゃなくて……私を探しに来てくれた笹木なのかもしれない、と。
(終)