真相-3
「楽しいね〜!さっきのラッコ、かわいかったな〜。うちにも欲しい〜!」
と言う奈々子を葵は優しい目で見つめた。
しかし奈々子の心にふと不安がよぎる。
(この目・・・もしかしたら、ゆかりに対して?
私の中のゆかりを見ているの・・・?)
奈々子の不安そうな顔に気がついたのか、葵はすぐに彼女に問いかけて来た。
「疲れちゃった?少し休む?」
「ううん、大丈夫だよ。」
「それならいいけど。」
「あ、見て。もうすぐイルカのショーが始まるみたいだよ。急ごう!」
そう言って奈々子は走り出そうとした。
と、その時、急に飛び出してきた子供にぶつかりそうになる。
「危ないっ!」
葵はとっさに奈々子を支えてくれた。
子どもはそんな彼女に気がつかずに、走り去ってしまった。
「大丈夫?奈々子さん。」
「う・・ん。ありがとう。」
奈々子は気がつくと彼の胸にしがみついていた。
葵の鼓動が、トクトクと聞こえる。
こんなにも彼は近くにいるのに、奈々子は彼の心が遠くにいるような気がした・・・。