初体験-4
“君はだれ?”
“あの・・・私は皆川って言うんですけど、ここの病院の付属の看護学生です。”
“そう、ごめんね。妹疲れてるから廊下でいい?”
“構いません。・・・あの、さっきロビーでピアノ弾かれてましたよね?”
“ああ、君も聞いてくれたの?”
“はい!それで、最初に弾いた曲がとても素敵で、
よかったら曲名教えていただけませんか?CD探したくて。”
彼は驚いた顔をした。
“あの曲?”
“すごく素敵な曲でした。私ピアノとかよくわからないんですけど、
なんていうか切ないけど、愛に満ち溢れた感じがして、すごく心地よかったんです!
誰の曲なんですか?”
“・・・僕の。”
“え?”
“あの曲、僕が作ったんだ。”
“そうなんですか?!すごいっ!!あんな素敵な曲作れるんですね。”
“ありがとう。そう言ってもらえてうれしいよ。”
“音大生って聞いたんですけど・・・。”
“そうだよ。作曲科にいるんだ。”
“それじゃあ、色んな曲作られているんですね。あ、あの曲、題名があるんですか?”
“未来”
“未来・・・妹さんの名前なんですね・・・。”
“そう・・・。あの子のために作曲した。”
“そうなんですか。だからあんなに愛情が感じられたんですね。”
彼は俯いて更に小声で呟いた。
“未来はもう長くない・・・。
僕が妹にしてやれることはこれくらいしかなくてね・・・。”
奈々子は何も言えなくなってしまった。
“あの曲、気に入ってくれてありがとう。今度録音したらCDにしてあげるよ。”