疑惑-12
何食わぬ顔で演技をする。
「何言ってんの、豹介君!ゆかりが選んだのは、豹介君でしょ?もっと自信持ちなよ。」
「・・・だってさ・・。」
「もしゆかりが葵君の事好きだったら、豹介君とは付き合わないよ。ゆかりは二股なんてする性格じゃないし!小さい時からあの子を見ていた私が保証する。」
豹介は顔を上げ、奈々子の方を見た。
「葵君だって、本当にゆかりの事好きだったら、
豹介君に紹介なんてしないんじゃない?」
「そっ・・・そうだよな!」
「そうだよー!元気だしなって。そんなんじゃ脚だって早く良くならないよ。」
「あー、奈々さんに相談してよかった!でも本当にゆかりには内緒な!!」
「わかってるって。じゃあお大事にね。」
そう言って奈々子は車を出した。
(最低だ、私。
自分のために豹介君を励ました・・・。)
奈々子は自己嫌悪に陥りながら帰宅した。