疑惑-11
(葵君はゆかりが好き・・・?)
思い起こせば思い当たるふしはあった。
(初めて会ったあの夜・・・。
私の腕を掴んだ彼は、私の顔を見て驚いていた。
ゆかりも住む同じ駅、彼はゆかりが泣いていると思って私に寄って来たの・・・?
それに、叔母さんの一言・・・
“葵君がゆかりの彼氏かと思っていた”
って言ってなかったけ・・・?
葵君はゆかりが好きだったけど、ゆかりは豹介君と付き合うことにした。
だから諦めたの・・・?)
奈々子は葵の事がわからなくなる。
(いや違う、私は彼の事何も知らない・・・。
もし豹介君が自信を失ってゆかりと別れてしまったら、
葵君はゆかりのもとへ行っちゃう・・・?
嫌だ、そんなの嫌だ。)
奈々子は自分のためにも、豹介とゆかりを別れさせないようにしなくては!
と自分本位な事を考えてしまっていた。