越えられない父の存在-2
太陽が昇り始めた頃、絵茉はうっすらと目を開けた。いつもの見慣れた天井と窓を目にすると、―――私、生きている・・・。またお父さんたちの元に行けなかった。
と彼女はそう思った。
むくりとベッドから起き上がると、絵茉の部屋のソファーに秀慈が寝息を立てて眠っていた。ずっとついていてくれたのかな?そう思って絵茉は自分が使っていた薄手の掛布団を彼にそっとかけた。彼女は愛しい人を見つめるような目で、秀慈のサラサラの髪の毛にそっと触れようとした。しかし、絵茉はすぐに手を引いた。こんな汚れている自分が秀慈に触れてはいけない・・・・。
絵茉はそのまま自室を後にした。ゆっくりと廊下を歩き、惨劇の合った食卓へ向かうと昨日の夕刻を思い出し、絵茉はぶるっと身震いをした。春花が投げつけた料亭の包み紙が目に入る。その傍には素晴らしい形をしていた和菓子の餡が見るも無残な姿に変わり果てていた。