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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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卒業のその後に-4

「しばらく我儘を許して下さい」

悠子を忘れて気持ちの整理を付けるため。ほどなく星司はこの理由で海外に留学した。後継ぎ問題を早期に解決したい各務家だったが、星司の失意の大きさを知り、その我儘は容認された。

「あたしも自分の可能性に挑戦しますから」

陽子もまた、星司と悠子に対する気持ちの整理を付けるために、自分の会社を立ち上げる事に専念し始めた。

各務家とすれば、気持ちの整理が付けば後継ぎの星司が帰ってくるし、また、陽子のこの新たな事業が、ネット社会に対応する上で各務家のプラスになると判断されて、これもすんなりと容認された。

しかし、各務家の思惑とは裏腹に、星司はこの留学を隠れ蓑に各務家とは全く無縁の人脈を作り始めていた。

今の状態では決して悠子と添い遂げられないと考えた星司が、各務家から離れるために打った布石であり、星司が留学を希望したのはこのためだった。

悠子から手紙を貰った日、星司は陽子と悠子を天秤に掛けて、心を鬼にして自分の姉に負担を強いる事を決意していたのだった。この時の陽子はそんな星司の心内を知る由も無かった。

一方、この頃の悠子はどうしていたか。

悠子は継母の地元で部屋を借り、卒業前から継母の従兄弟が経営する会社で、事務職をしながら暮らしていた。

雄一から星司が留学をした事を知らされても、悠子は実家には戻らなかったし、勿論、陽子に会う事も控えていた。陽子に会わせる顔も無いし、何よりも星司を忘れるためだった。

しかし、元々内に隠る気質の悠子にとってそれは簡単な事では無かった。自らの意思とはいえ最愛の男と別れた事は、悠子の心に想像以上の負担を強いていた。他の恋愛対象を探せばいいのだが、内気な性格が災いし、新たな恋愛を望む事はできなかった。

「星司くん…」

仕事をしている時はそうでも無いが、夜1人で居る時や休みの日は堪えた。1人の部屋で嗚咽を漏らす日々が続いた。

日に日に星司に対する恋慕が募り、やがてそれが体調にも影響を及ぼし始めていた。時折姉の様子を窺いに来る雄一は、日増しに塞ぎ込む悠子を心配し続けた。

「姉ちゃん、このままじゃダメだ」

幾度かの訪問の末、雄一はとうとう我慢できずに嫌がる悠子を強引に実家に連れ戻した。星司の留学がら1年半が経とうとしていた。

「あたしが帰ってる事は陽子ちゃんには言わないで…」

1年以上も経って、いまだに引きずる姿を陽子には見せたくない。雄一が陽子と会う時には『元気にしてる』と伝えて貰っていたから、今の自分を見せれば心優しい陽子を傷つける事になる。そう思った悠子は弱々しげな表情を向けて雄一に頼んだ。

しかし、運命は皮肉だった。

陽子にとっても、子供の頃から知る雄一は弟のようなものだ。時折、雄一の様子を伺いに陽子は顔を見せていたが、奇しくも悠子が実家に戻ってきたその日と重なってしまった。

「近くに用事があったから寄っちゃった」

何かいい事があったかのように、陽子の表情は明るかった。

「そっ、そう、い、いらっしゃい…」

この時の雄一は、陽子の父、陽司に心を読まさない程のしたたかさは、まだ身につけてはいない。悠子の事が心の枷となり、雄一はぎこちなく応対してしまった。

いつもと違う対応に社会に出た女の勘を誤魔化す事はできなかった。

「雄ちゃん、何だか様子が変ね?何か有ったの?」

「な、何にもないよ…」

「だったら折角来たんだから、こんな玄関先じゃなくて中でお茶でも飲ませてよ。雄ちゃんもあたしの会社の状況を知りたいって言ってたじゃないの。それと他にもニュースもあるんだから」

雄一の心内を知らずに、陽子はいつに増して明るかった。

確かにここのところ悠子の事で雄一自身も塞ぎ込む事が多く、陽子の会社設立のような明るい話題は聞きたかった。しかし、悠子の帰ってきた家に陽子を上げるわけにはいかない。例え勘の良い星司で無くても、悠子が居る雰囲気は陽子にもわかるはずだ。それに陽子を前に誤魔化し続ける自信は雄一には無かった。

「でも、今日はダメなんだよ」

困惑顔で応える雄一に、陽子はピンと来た。男がこんな反応を示したら絶対に女の影が在るはずだ。



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