プロポーズ-6
食事を終えてコーヒーを飲んでいた時、幸雄が口を開いた。
「本当はこんな所で言いたくなかったけどさ、
奈々子、本当に俺と結婚しようよ。」
「え・・・?」
「お前に結婚したいって言われるまで何も気にしてなかったけどさ、
俺も1ヶ月奈々子に会えない間考えたんだ。
お前を失いたくないってさ。お前のいない生活なんて考えられないよ。
・・・だから昨日、その・・・お前が気になるやついるとか言うから、
ついカッとなっちまってさ。ごめん・・・。」
幸雄がまっすぐに奈々子を見つめる。
彼女はそんな彼の目から目を逸らせなかった。
するとその時、聞き覚えのある女の子の声が聞こえて来た。
「あーーー!奈々ちゃん!」
ゆかりだった。
彼女は奈々子の席に駆け足で寄って来るや、驚いた表情をする。
「あれっ!幸雄さん?えっ??何で?二人別れたんじゃないの?」
幸雄がとっさに返事をする。
「別れてないよ。奈々子が勝手に勘違いしているだけ。」
「そうなの?」
ゆかりは奈々子を覗きこむが、
彼女は返事を出来ずに固まってしまう。
すると今度は背の高い体格が良い少年も、ゆかりの傍にやって来た。
「奈々さん、久しぶり〜!あれ、彼氏?」
ゆかりの彼氏の豹介だった。
この間より日に焼けているようで、褐色の肌になっていた。
幸雄は営業用の笑顔で豹介に対応する。