友人の裏切り-5
「そっかー、あいつ元気何だな…。」
「はいっ!
学校の花壇を眺め、彼女の朗報を彼に告げる。
「でも、まだ…無理してる感が残ってるような…。」
「あぁ、俺も出来る限りやってみる。」
「佐伯…君。」
「勿論、友達としてな。」
やっぱり彼は優しい…。
「あー、若葉ちゃんめっけぇー♪」
「!…あぁ、何だ。」
突然背後から最近聞き覚えたのんびりとした声。
「風馬…君。」
「えへへぇー♪」
昨日、巴ちゃんと話した事を思い返す。彼とは幼馴染…でもそれ以上でも…。
「部活ー、何部に入ることにしたの?」
「うーん、美術部かなぁー。」
「あぁやっぱりー、どう?調子は。」
「まだ入ったばかりだよー。」
「…そっかー、まっ美術部も小規模だって言うけど、コンクールに出れたり学校祭じゃー
大活躍できるみたいだし、これからが楽しみだね。」
私は彼とは親しい友人で居たい、巴ちゃんの話を全て信じる訳じゃないけど。
「うん!若葉ちゃんのお蔭だねっ!」
「えっ、どうして?」
「どうしてって君が勧めてくれたお蔭だからに決まってんじゃん。」
えぇー、少し…強引?隣で佐伯君が少し彼に対して眉を立てているのに気づかず。
「そんな、私は別に。」
「やっぱり…変わってないねー。」
「えっ?」
「小学校の頃からそうだった…、僕を弟のように気遣ってくれて。」
彼は自分が言うのも何だが少々頼りない感じで、一人っ子の私は彼の言うように弟みたい
に思っていて。
「風馬君は、さぁー。」
「うーん?」
「転校して、私に会えて…嬉しい?」
「えー?」
自分でも驚くように思わぬ質問を彼に投げかける。
「……何言ってんのー?当たり前じゃんー、幼馴染何だかさぁー。」
「そっ、そうだよねー。」
ホッと胸を撫で下す…、ホラやっぱり考え過ぎだよー、巴ちゃんは。…しかし。
「……ねぇ、そっちの人、だぁれー?」
「へっ?」
不意に、佐伯君の方に首を向ける。佐伯君も予想外の質問に目を丸く見開く。
「えーあー、佐伯君!佐伯あたる君!こう見えてバスケ部なの」
「こう見えてって…。」
「可愛いでしょ?この前大会で優勝したんだよ、スポーツ万能で頭も良くて。」
「人形か、俺は…。」
「ふーーーん……随分褒めるんだね。」
「え…いやーまぁー。」
すると彼はさっきまでの緩い表情が消え、一歩前に私へズイッと寄り。
「ひょっとし彼氏さん?」
「!!」
ハートで矢を射抜かれ、頭に稲妻が走る。
何で、そんな事を…
「…ねぇ、答えてよ。」
「……風馬…君。」
「………。」
「ど、どうしたのよ、風馬君、変だよ?転校してから、何か…。」
「……。」
否定をしない、まさか巴ちゃんの言うように。
「変じゃないし、転校する前と変わってもないし。」
「で、でも。」
「それで?どうなの?付き合ってるの、付き合ってないの?」
「んー。」
交際してる…、そうハッキリ言えば良い筈、でも、何か。
交際の有無を責めよって問う彼。ハッキリ事実を言えない私。
「付き合ってるけど?」
「佐伯君!」
言葉を失う私を見かねて、代わりに応える彼。
「へぇーーー、ハッキリ言うんだね。」
「悪いか?数年ぶりに再会した幼馴染に恋人がいちゃー。」
敵意に満ち溢れた眼差し…。
「何で?」
「は?」
「聞いたよー、クラスの人から、君の評判…。」
「何がだよ。」
何か、嫌な空気。
「だらしないんだってねぇー女の子達に…、モッテモテで鼻の下伸ばして、彼女たちの
純粋な想いを踏みにじって、中途半端に付き合ったりして。」
「……。」
なっ!
「一部の人が言ってたよ、「彼は女ったらし」だって。」
「……。」
「君に泣かされた子がいーーっぱい居るって。」
「………。」
彼の暴言にひたすら反撃しない佐伯君。
「若葉ちゃんにだってもしかしたら。」
「いい加減にしてよっ!!」
「!!」
私は思わず自分でも驚くくらい大声で叫び、二人もそれに驚いて振り向き。
「彼は女ったらしじゃないし、そんなだらしなく何てないっ!」
「柊…さん。」
「……。」
大好きな人を悪く言われるのがこんなにも不快とは。目を半開きで枯れた植物ののように
冷たい目で私を睨む。優しかった彼の面影は、もう。
「じゃーやっぱり。」
「そうだよっ!私は彼の事がだぁーい好きだよっ!?交際してまだ日が浅いけど、少し
ぶっきら棒なとこはあるけど、私の事を大事にしてくれて。」
「……。」
大事…、と言った時風馬君の拳が強く握られ。
「言っとくけど、私は貴方とは付き合えないから…。」
「……。」
「私は、君とはただの親しい友達でいたい‥。」
これが私の願い、でも…。
彼は思い詰めた顔で地面に視線を落とす。
「……。」
「………。」
佐伯君は、険しい顔で彼を見つめる。重たい空気。
「そっかー、ゴメンねー!」
「えっ?」
急にパァと笑顔になり、そのまま美術部の集まりがあるとか言いだして、この場を瞬時に
立ち去った。
「何だよ、アイツ…。」
「風馬…君。」
この時私は彼が理解してくれたのだと思い込んでいた。