初デート-11
そう言って葵がスマホをポケットから取り出すと、
ちょうどよく電話がかかって来たが、彼は取ろうとしなかった。
奈々子は自分に気を遣って電話に出ないでいる事に気がつき、
彼に応対するように促す。
しぶしぶ葵が応答すると、どうやら彼の友達のようだった。
今から遊ばねぇ?と言うような複数の元気な声が、聞こえてくる。
奈々子は急に現実の世界に戻された気になった。
彼だって私みたいなオバサンといるより、
同じ年頃の子たちと遊んだ方が楽しいはずだ。
そう奈々子は思って、彼に友達の所に行くように勧めた。
せめて彼は、奈々子を家まで送ると言ってくれたが、彼女は断った。
彼女は葵に自分の連絡先を教えた後、一人で家路へと向かった。
(本当はもっと彼と一緒にいたかった。
友達の所にも行って欲しくなかった。
でも私たちの関係は不純で、許されない・・・。)
そう考えるのに家に帰っても、葵の顔が彼女の頭から離れないでいる。
彼の唇の感覚がまだ残ってる。
誰か助けて・・・。