再会-7
あ お い
彼の名前が奈々子の頭の中でリフレインする。
ゆかりが指さした少年の先に、彼がいる。
奈々子は彼の顔を見た。
葵も彼女の顔を見つめていた。
沈黙が部屋の中を流れる。
するとゆかりが不思議そうに口を開く。
「あれ?どうしたの?奈々ちゃん。」
奈々子が我に返ると、ゆかりが彼女の目の前で手をブンブンとかざしていた。
「あ、もしかして奈々さん、葵に見とれてた?
こいつさ〜、俺らの学校で一番かっこいいって言われてるんだぜ。」
「そうそう、今年のバレンタインなんて、100個くらいチョコもらってなかった?」
「・・・そんなにもらってない。」
聞き覚えのある声。
・・・あの夜と同じ声、彼は紛れもなく葵だと奈々子は確信する。
彼女の鼓動が大きく、早くなる。冷汗が額に滲む。
どうしよう・・・どうしよう・・・。
彼女は平然を装って、やっとの思いで口を開く。
「そ、そうなんだー。」
「でもこいつ、こんなにもてるのにまだ童貞なんだよな。」
と、豹介がサラッと言った。
「えっうそ、マジで?葵まだヤッた事ねぇの?意外〜!」
「とっくに初体験済ませてるんだと思った〜。」
「なんで、なんで?友莉先輩とこの間、
一緒に帰ってなかった〜?何もなかったの?」
豹介とゆかり以外が、発言に食いつく。
「うるさいって・・・。」
葵は顔を赤くしてボソッと呟いた後、奈々子の顔を盗み見た。