出会い-18
彼の視線が背中に突き刺さっているようで、恥ずかしさに耐えながら小走りで向かった。
洗面所の鏡を見ると、昨夜落とし忘れて、崩れたメイクの顔の奈々子がそこにいた。
(ひどい顔。こんな顔も見られちゃったんだ!
それにしても、いい歳して何やっているんだろう、私・・・。)
急いで化粧を落とす。
顔を洗ってサッパリした肌とは正反対に、彼女の心は不安で曇っていた。
(・・・どうしよう、これから。)
そう思っていると、突然、葵が洗面所の隙間からチラッと顔を覗かせ、
慌てたように声をかけてきた。
「奈々子さんっ!」
奈々子は突然話しかけられて驚く。
「きゃあっ!」
裸だけでなく、素顔も見られてしまった彼女は、恥ずかしさでいっぱいだった。
しかしよく見ると、葵はすでに服を着ていて、今すぐ帰るという様子だった。
「これから用事あるの忘れてた。ごめん。俺、帰るね。」
そう言って、彼は顔を引っ込めてしまった。
(えっ?・・・もう帰っちゃうの?)
――――と、とっさに奈々子が思ってしまった時、
「あ、奈々子さんのすっぴん、超かわいいね。」
と、すぐにまた洗面所の扉から、笑顔で葵がひょっこりと顔を覗かせたかと思うと、
すぐに彼は、奈々子の部屋から出ていってしまった。