出会い-10
早足で駅へと向かい、
電車に揺られながら、奈々子は思いにふける。
(あっけない終わりだったな。
7年間も付き合った彼との終止符が、こんな形になるなんて思わなかった。)
しかし不思議と、奈々子に後悔の気持ちはなかった。
時刻は夜の8時半。
奈々子が自分の住む駅に降りた頃、ようやく彼女に感情の波が押し寄せる。
改札の外に出るとパラパラと小雨が降っていた。
奈々子は傘なんて持っていなかった。
(結婚してなんて言わなきゃよかったのかな。
そうしたらこんな空しい気持ちになんて、ならなかったのかもしれない。
幸雄との7年間はなんだったんだろう。
今から電話して、ごめんって謝ってもとの関係に戻った方がいいのかな・・・。)
彼女はこみ上げてくる涙を我慢することが出来ず、
声を殺しながら泣きながら歩いていた。
次第に雨音が強くなる。
奈々子が我に返ったのは、突然ぐいっと彼女の腕を掴まれたからだった。