愛しい人-1
ティアラの意識がふっとまた戻ると、彼女は見た事のない景色の中にいた。
優しい花の良い香りがする。
彼女は丁寧に洗濯されたであろう、純白のシーツが敷かれた大きく心地良いベッドに
横たわっていた。
・・・もしかしてラウルが来てくれたのは夢で、
まだあそこに閉じ込められているの・・・?
そう思って体を起こそうとした。
しかしふと隣を見ると、彼女は自分の左手がギュッと握りしめられていることに
気がついた。
ラウルだった。
彼は顔をシーツに埋め、すーすーっと寝息を立てている。
ティアラは彼の髪の毛をそっと撫でる。
(ラウルは私にずっとついていてくれたんだ・・・。
もう、どこにも行かないで・・・。)
ティアラはしばらく彼を見つめていると、ラウルが眠りから覚め、
優しくティアラの名前を呼んだ。
「ティアラ・・・気がついたのか?」
ティアラの心が温かく染まっていく。
「・・・ずっと傍にいてくれたの?」
「・・・まあ、な。」
照れたようにラウルは顔をそむけた。
「それより、大丈夫か?・・・体。」
そう言われて彼女は、ゾクッと悪寒を感じた。
(そうだ、私はロイクに犯されて・・・汚れた体になってしまった。)
ティアラはとっさにラウルが握ってくれていた手を離す。
凌辱された事を思い出すだけで次から次へと、涙が勝手に溢れてくる。
「うっ・・うぅっ・・・」
ラウルは何も言わずにティアラをそっと抱きしめた。
彼はティアラの涙が止まるまで、ずっと抱きしめ続けてくれた。