愛しい人-2
しばらくして、ティアラが落ち着いた頃、ラウルは言った。
「そういや、目が覚めたらこの国の妃がお前に話があるって伝えてくれって言われた。」
「お妃様が・・・?」
「その前に、風呂を用意しているから入れって言ってたぞ。」
「お風呂?」
「湯にでも浸かって、リラックスしろってことじゃねえか?」
「そう・・・わかった。」
そう言われて、ティアラが部屋に備え付けられている浴槽へと向かうと、
ラウルは部屋から出ていこうとした。
彼女はそれをとっさに止めた。
「待って!行かないで!!!」
「あ?」
「・・・行かないで・・・。もう一人にしないで。」
ティアラは彼を追いかけて、彼の服の切れ端を必死でギュッと掴む。
ティアラの手はカタカタと震えていた。
それに気がついたラウルは彼女を窘める。
「大丈夫だって。お前が風呂に入ってる間、散歩してくるだけだ。」
「・・・・・。」
ティアラは今にも泣きだしそうな表情で、ラウルを見つめた。
彼女は小さい時の記憶が蘇って不安になる。
ラウルが突然いなくなった時の事。
あの時も、こんな風にすぐ帰って来るから何て言って、行方知らずになってしまった。
ラウルは彼女の気持ちがわかったのか、部屋を出ていくのをやめた。
「・・・今、行くなって事は、お前に触ってもいいって事か?」
彼はまっすぐな瞳でティアラを見据えた。
彼女は頷く。
「じゃあ、俺がお前の体洗ってやる。」
ラウルは彼女の背後にまわりそっと服を脱がせ、彼女の首筋に口づけをおとした。
「んっ・・・」
思わず彼女は甘い声をあげてしまう。
そのままラウルは優しくティアラを抱きしめた。
彼に抱きすくめられると、彼のドクドクと脈打つ心音がティアラの背中に伝わった。
彼に触れられて、ティアラの心は安らぎに満ちてくる。