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あるお伽噺
【ファンタジー 官能小説】

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愛しい人-19

ティアラとラウルは部屋から出ることにした。
彼女はラウルに問い詰める。

「ラウル、ひどいよ・・・。また私を置いて行こうとした。」

「―――けじめをつけたかったんだよ。罪を償って、お前を嫁にもらおうと思った。
何年かかるかわかんねえと思ったけどよ。」

「よっ、嫁?!」

ティアラは嬉しそうに、驚く。

「それじゃあ、一言言ってよ・・・。また急にいなくなったら、
私・・・もう生きていけない!」


彼女はひしっとラウルにしがみついた。もうどこにも行けないように、
きつく、きつく抱き付いた。


「おい、そんな力強く抱き付くなって。痛てぇな・・・。」

「・・・私も愛しているラウル。」


ラウルは黙ったまま答えない。


「ラウルも!もう一回言ってよ!」

「あ?」

「あ?じゃなくって、もう一回私に向かって愛してるって言って!」

「こんな所で言えって言うのかよ。」

「今すぐ言ってよ・・・。お願い・・・。」


泣きだそうとする彼女に見つめられて、ラウルは観念したように耳元で囁いた。


「・・・愛してるティアラ。」


彼は屈んでそのまま頭を、ティアラの肩に埋めた。
ティアラがチラッと横を見ると、耳を真っ赤にした彼の横顔だけ見えた。
彼女は気がつかないふりをして、彼を抱きしめ続けた。


こうしてティアラと彼女の母親は、母親の姉とお城で暮らすことになり、
ラウルは森のほとりの小さな家で、狩人の見習いとして暮らすことになった。
王と妃は、ラウルが一人前の狩人になったら
一緒に暮らしてもいいと許可を出してくれた。

ラウルの盗賊仲間は、兵隊が廃墟に乗り込んできた日に、
洞窟に潜んでいたところを発見されて、ひとまず城の牢屋に入れられていた。
妃の計らいで、彼らは監視付きで仕事を与えられ、皆まっとうに暮らし始めていた。
残忍な犯行を行う盗賊集団ではなかったので、皆仕事が与えられると熱心に働いた。


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