愛しい人-14
妃は続ける。
「それでね、あなたたちにもこのお城に一緒に住んでもらいたいの。
いいわよね?」
ティエラも娘に尋ねる。
「私はここでお世話になることにしたの。
王様はとても寛大な方で私たちを受け入れてくれるそうよ。」
(・・・このお城で暮らす?
ラウルは・・・?
彼はどうなるの?
私は彼と一緒にいたいのに。
もう離れ離れになるなんて嫌なのに。)
話が決まってしまう前に、ティアラは慌てて口を開く。
「あのっ!私・・・できません。」
「あら、どうして?」
「私は・・・私の愛する人と一緒に暮らしたいからです。」
「そう、あなたには心に決めた殿方がいるのね。」
「はい!」
「何をしている方なの?職業は?」
妃に尋ねられてティアラは困った。
盗賊です!なんて言えるはずがない。すると、
「狩人よ、お姉さま。」
ティエラが代わりに答えた。
「まあ、そうなの!そうだわ、ちょうどよかった。
王もね狩りが好きで、度々森へ出かけて行くのだけど、
最近新しく配属になった付き人の腕が良くないんですって。
その者の代わりに、あなたの想い人が王付の狩人にしてもらえるように、
頼んでみるわね。」
「えっ?!」
話がややこしくなってしまった。
王様と一緒にラウルが狩りをする・・・?
そんな姿想像できない!
困惑するティアラに、母がまた救いの手を差し伸べる。
「お姉さま!そんな、まだティアラと同じ年頃の子なのよ。
王様と狩りをするなんて、早すぎると思いますわ。」
「そんなことないわよ、優秀な人材は幼少の頃から育てていくのが、
国の繁栄にも繋がるのです。」
「・・・そうは言っても。」
困ったようにティエラは娘に目くばせする。
「さあ、そうと決まったら早く彼を連れて来てくださいな。
彼が王付の狩人になれば、このお城で一緒に暮らせるわよ。」
(ラウルは盗賊仲間を探しに行くと行ってしまった。
どうしよう、どう言ってお妃様に断ればいいの・・・?)