サミュエルの秘密-9
ロイクが続きを話し出す。
「そうだ、それはティエラが持っていたもんだったからな。
だから俺はお前に尋ねた。なんでてめえがこれを持っているんだってな。
でもお前は何にも覚えてないときた。その場で殺しても良かったんだが、
俺の剣を避けたお前を殺すには惜しいと思った。
お前を生かせば、ティエラの消息を探す鍵になるかとも思ってな。
俺はその象牙を奪い取り、返してほしかったら俺の所へ来な。
と言ったんだったな・・・。」
耳の穴をほじりながら思い出したようにロイクは言う。
「親分が殺されて、俺の持っていたただ一つの本当の俺の手がかりが奪われた。
俺は絶望の淵にいた。
それからすぐに割れるような頭の痛みに襲われた。
俺はその場に倒れてしまった。そして気がついた時には俺は全ての記憶が戻っていた。
俺の本当の名前がラウルであること、俺は狩りの真似事をして崖から落ちた事。
それからティアラという幼馴染みがいたという事。
すべて思い出すのに7年もかかってしまった。」
ティアラの目から涙がこぼれていた。
やっぱり彼はラウルだったのだ・・・。