サミュエルの秘密-10
今すぐ彼に駆け寄りたい。そう思って彼女は手を伸ばそうとしても、
羽交い絞めにされて身動きが取れなかった。
ロイクが口を開いた。
「―――となると、ティエラはお前がいた村にいたってわけだな。
そして面影のある娘まで産んでいた・・・。」
じろりとティアラを見る。
(おかしい・・・私の村はこの盗賊たちに襲われた。
それからお母さんも連れて行かれた。
でもこの男はまだ母の消息を知らない・・・。どういう事?
お母さんは一体どこにいるの・・・?)
ティアラがそう考えていた時、ロイクは再び言った。
「ふん、まあいい。これからじっくりと聞き出すとするか。
サミュエルを地下牢へ、この娘を例の部屋に連れて行け!」
そう言い放つと
ロイクの部下が一斉にラウルに襲い掛かった。
彼は成す術もなく、囚われてしまった。
ティアラは喉元からナイフが離れるのを見計らうと、
羽交い絞めしている男から逃れようと、出来る限り暴れた。
「やだっ!ラウル、ラウル!!」
「ティアラ!!」
彼も私に向かって叫んだ。
その時、ティアラを捕まえていた男が彼女の腹を力いっぱい殴った。
ドスッという音が響くと、
そのまま彼女の視界は真っ暗になった。
ティアラは気を失い、その後はどうなったのか覚えていない・・・。