滅ぼされた村-5
その夜、ティアラの父親は突然、彼女に告げた。
「ティアラ、お前はこのままじゃいけない。父さんたち考えたんだが、
この村から離れて暮らさないか?」
「・・・村を出る?どうして?」
「お前は悲しみから乗り越えなければならない。ラウルがいなくなってもう8年だ。」
「嫌よ。私はここで彼を待っているんだから!」
母親も口を開く。
「どんなに待ち望んでいても、どうしようもない事もあるのよ。
私たちはあなたが一歩前に進んでほしいと思っているのよ。」
「それでだ。隣町の地主の息子が、お前を嫁にもらいたいと言っているんだ。
彼が偶然この村を通りかかった時に、ティアラを見初めたそうなんだよ。
父さんも彼と話したんだが、なかなかの好青年だったよ。
だから明日、みんなで隣町に行ってみようじゃないか?」
「どんな方か会ってみるだけ、話してみるだけでもしてみない?」
両親の問いかけにティアラは黙ったまま俯いていた。
(お父さんとお母さんは私がラウルをどんなに想っているのか知っている。
私はラウル意外となんて結婚しないって知っているのに。
それなのにこんな仕打ち・・・ひどい。)
心の中で彼女はそう思っていた。
ティアラが何を考えているのか見抜いている両親は、
諭すように励ますように語り掛ける。
「ティアラ・・・あなたを必要としてくれる人は他にもいるのよ。」
「お前が少しでも元気を取り戻してくれればと、この縁談を受け入れたんだよ・・・。」
両親の願いは届かず、ティアラは堪らず叫んだ。
「勝手なことしないで!彼はまだ死んだわけじゃない!!帰って来るんだから!」