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例えばこんなカリキュラム
【二次創作 官能小説】

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〜 国語・朗読 〜-1

〜 29番の国語 ・ 朗読 〜


 カッ、カッ、カッ。
 
 12号教官の板書はいつも素早く小気味いい。 まず初めに本時のテーマを大書するのが、12号教官の授業スタイルだ。 縦書きで『朗読』と大書して、私たちと目を合わせる。

「作品を味わう方法は2つあります。 1つは文章を分析、分解して論理的に解釈する方法です。 批評や解説の立場に繋がる方法です」

 私は無言でノートをとる。 教官が何を喋っているか理解できない時は、一語一句そのまま記録する。 おかげで聞きながらノートをとるコツを掴み、今では速記並に鉛筆を走らせられるようになった。 

「もう1つは文章に没入し、作品の雰囲気に浸りながら自己を同一化する方法です。 小説や随想を味わうには効果的な取り組みですね」

 机上には副読本の『声にだして読みたい国語』とノートを拡げている。 

「まずは後者です。 感情を込めて作品に向き合うことからはじめましょう。 名文を味わうことで、自身の表現に幅ができますし、共感を呼ぶ文章のリズムや韻律が身に付きます。 ポイントは3つ。 いいですか」

 カッ、カッ、カッ。

 黒板に白墨がうちつけられる。

「1つ。擬音、情緒表現、オノマトペは極力実音を使うこと。 例えば『もぐもぐ』とあったとき、本当に『もぐもぐ』と喋るのはただの間抜けです。 筆者が表現したい音を再現すればいいわけで、食べるときにだす音を自分で再現しましょう。 口の使用は最終手段です。 身体全体で再現することで、より作品に溶け込めます」

 早口にまくしたてる教官のスピードにどうにかこうにかついてゆく。

「2つ。状況、身体表現、空いている手で肉体を刺激すること。 例えば『主人公がビンタされる』シーンがあれば、実際に自分の頬を張りなさい。 作品の状況を空想するのは勿論、再現できる部分は取り入れて、よりリアルな感傷に浸りましょう。 作品の描写に忠実であればあるほど臨場感は増すものですよ」

 『ビンタのシーンでは、実際に頬をぶつ』
 忘れないようにしなければ。 

「3つ。登場人物を理解し、自分を投影すること。 主人公が残忍であれば、自分もなるたけ残忍になりなさい。 主人公が打たれて喜ぶマゾヒストなら、自分も同様にマゾヒストになるの。 役になりきるだけじゃなくて、自分の中に該当する部分を膨らませて、新しい自分を見つけるつもりで取り組むようにね。 宜しいですか?」

「「ハイ!」」

 『インチツの奥で理解します』という無様な返事は、担任の2号教官が指定した挨拶だ。 Cグループ2組でのみ成立する、私達だけの服従の言葉ということだ。 他の教官に対しては、基本的に『ハイ』だったり『おねがいします』だったり、何の変哲もない返事で答える。 そういった原則を知らず、最初に『インチツの奥で理解します』と国語の授業で答えた生徒は、12号教官から一本鞭の指導を受けた。 2号教官より一回り長い鞭で、皮膚に纏わりながら擦るせいか、独特の打擲音がして、長いミミズ腫れが肌に浮かんでいた。

「いいお返事だこと。 それじゃあ4ページを開きなさい。 いい、というまで続けましょう。 1番、その場に立って始めなさい

「ハイ! 『弘美が目覚めたとき、既にマスターベーションの余韻はひいていた。 初めて絶頂に達した衝撃で意識を失ったと気づいたのは、自分の指が淫水でてかつき、生臭い異臭を放っていたせいだった……』」 

 こうして『朗読』の授業が始まった。 
 
 



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