〜 社会・現社 〜-1
〜 １９号の社会・現代社会 〜
現代史。
民主主義、男女同権、市場主義が大手をふって歩いていた時代。
国際連合、オリンピック、世界機構が恥ずかしげもなく掲げられた時代。
原子力発電、火力発電、非循環エネルギーで賄われていた時代。
二酸化炭素、メタン、ハロン、温暖化ガスで地球を蒸し焼きにしつつあった時代。
以心伝心、ネットに衛星、GPSからスマートウォッチ。 情報手段が星のまたたき。
原爆、水爆、弾道ミサイル、パトリオットにハープーン。 攻撃兵器が山となり。
イージス艦にレーダー兵器、THAADにMMDにドローンシステム。 防御対策も雲霞の如く。
人口６０億という、現在の１２倍の人口を抱え、地球がヒトで溢れかえっていた時代。
或る意味人類の繁栄が頂点に達した、喧噪と活気に満ちた時代。
そんな時代からいかにして『静寂の時代』たる現在に移行したのだろうか。 誰しも抱く疑問であり、私だって例外じゃなかった。 学園に入って幸せなことなんて数えるほどしかないけれど、現代史を学べた点については、私にとっては学園に入って良かったと素直に思える。 幼年学校を卒業した生徒のうち、学園に入学した一握りだけが、直近の人類の歴史を知ることができ、他の生徒は何も知ることなく一生を終える。 だとすれば、例えヒト以下に自分を貶める場であったとしても、私は学園に入学したいと思う。
私が学んだ、現在へ繋がる直近の歴史。 すなわち科目でいうところの『現代史』だ。 現代史は扱う出来事が少ないため、１週間という短い期間で講義する。 私に講義してくれた当時の教官は、列伝体の古代史に対して、紀伝体で教えてくれた。 淡々とした教官の記述を、今度は私が再現する番だ。
……。
古代の大工の生年月日を基準とする旧世紀、西暦２０２０年。 東京オリンピックが史上最大規模で興行され、成功裏に幕を閉じる。 ２年前の平昌冬季オリンピックと比較され『オリンピック史上最大の温度差』と称された。
２０××年。 日米防衛ガイドラインが大きく改定され、相互防衛義務と相互主戦義務が追加される。 憲法改定は国民投票で否決されたものの、条文解釈の度重なる変更により、実質的な自衛隊派遣制限がなくなる。 欧米、蒙古、希臘といった各国の米国軍駐留地（ただし韓国は除く）に、自衛隊が駐屯する。
２０××年。 現地政府の要請による治安維持のため、米軍が全世界に展開。 自衛隊もまた米軍出動に伴い、中東、イラン、シリア・ヨルダン、ウクライナ、チベット、ウイグル、スーダンに派兵される。 国連安全保障理事会がＧ２相互の拒否権により、完全にマヒする。
２０××年。 中露同盟が締結。 サンフランシスコ条約の一部破棄を国連に提訴。 以後、ジュネーブ条約をはじめ、過去に訴求した条約破棄運動が国連で展開する。
２０××年。 北朝鮮による核ミサイル（３１本中４本撃墜、２６本命中、１本不発）により、日本の主要都市が東京、大阪、名古屋をはじめ全て壊滅、日本は国としての形式を失う。 人口は２０万人をきった推計されるが、正確な数値は記録されていない。 国連、２０年ぶりに全会一致の決議をだし、北朝鮮を非難の上、連合から登録を抹消する。 東海（旧日本海）を含む日本のEEZを国際放射能汚染地域に認定。 日本からの出国、日本への入国、物資の輸出入が全面禁止になる。 政府をはじめ国としての機能を失った日本は、以後ADB【Asia Dangerous Base】と通称される。
２０××年。 米国は、北朝鮮による日本攻撃が中露の煽動によるものだと発表する。 西側連合VS中露共産圏による第二次冷戦開始。
２０××年。 パットン調査団、日本列島を調査。 わずかな国民の生存を確認するも、依然として残留放射能が規定値の数億倍なことを理由に、列島の隔離を継続する報告書を提出した。
２０××年。 北朝鮮独裁体制の崩壊にともない、第二次冷戦終了。 北朝鮮は中国が併合し、対馬及び竹島を韓国が占拠し、沖縄列島及び尖閣諸島、小笠原諸島等の島嶼を纏めて米国が５１番目の州とし、千島列島及び北海道は露国が自国に編入した。 これにより列島の隔離は九州・本州・四国・北海道に限定された。
２０××年。 核兵器永久放棄条約により、既存の核兵器はすべて日本海溝に廃棄される。
２０××年。 中露が国連を脱退。 アジア国際連盟『AIIA』（Asia International Instituted Association）を設立する。 対抗した米豪英は三国平和協商（Triangle Peace Partnership）を設立した。
２０××年。 ピッテン調査団、日本列島を調査。 土壌残留放射能はヒトの生存が不可能なレベルのままなことを確認する。 なお隔離状態にあった『ADB』では、主に皮膚と微柔毛を構成する遺伝子に出現した突然変異により、放射能異常耐性をもつ女性が増加していたことが後に判明。極めて素早く知能を発達させる遺伝子――後に命名されるところの『G遺伝子』――が、列島で生き残った男子のY染色体上にうまれた時期も、この頃と推定される。
……。
２０××年。 『ADB』内の記録は開示されていないため、あくまで推測だが、『ADB』で生き残ったグループが『O城跡』に集合し、共同生活を始める。
２０××年。 O城グループが、瀬戸内海で潮汐循環エネルギーを実用化させる。
２１××年。 O城グループが、大気循環エネルギーの理論を発明する。
２１××年。 O城グループががマントル対流エネルギーを開発、淡路・野島断層で実用化する。