隣の姐(あね)さん-1
1.
河原の石が太陽の熱で焼けている。
水から上がって、濡れた足で熱い石の上を飛び跳ねるように、グミの木陰まで走った。
真っ赤なグミの実が、たわわに枝にぶら下がっている。
夏の間、僕は水泳を終わると、いつもここでグミを取って食べた。あまり食べると、フン詰まりになるそうだ。
メェ〜ェ〜ェ〜〜〜っ
藪の向こうから、ヤギの鳴く声が聞こえた。
ふっふふっ〜〜ふっふっ
ふふふっ〜ふっふっふっ〜〜〜
(あっ、また、盛ってやがる)
鳴き声が、切ない鼻息に変わった。
隣の姐さんは、ヤギを飼っている。
姐さんの夫は出稼ぎ労働者で、いつも東京に出稼ぎに行っている。
姐さんは、ヤギを河原につれて来て、草を食べさせる。
時々、ヤギが重なって、盛っている。
姐さんは、子供を産ませて売るんだと言っていた。
藪を回ってみると、ヤギの首を結んだ紐を持って、姐さんが座っていた。
「タケちゃん、もう泳ぎ終わったの?」
「うん」
「おまん、ヤギが何してるか知ってるんか?」
「うん」
「タケちゃんはもう高校生だすけ、分かるんだ」
「盛ってるんだろう?」
「そうよ、子供を産ませて、お金を稼ぐんよ」
「タケちゃん、ふんどしの前ぇ出っ張って、きつそうじゃね」
「だって、・・・・」
僕は、黙ってうつむいた。
姐さんは意地悪だ。ヤギが盛っているのを見れば、チョンボが立つのは当たり前だろう。
「誰も見ておらんすけ、ふんどしを外してええんよ」
「ウン」
僕は、姐さんが僕のおっ立ったチョンボを見たいんだと分かった。