What do you think it is?-1
「相手に笑いかけてほしいとか、
そんな小さなことを願うのも無償じゃない気がするんです」
「愛なんて、恋なんて、綺麗事ばかりじゃないだろ」
そうなんだ。
愛なんて綺麗事じゃない。
「俺は乃恵にキスされそうになった時
自分がどれぐらい乃恵とキスしたいかよく分かったよ」
俺の言った言葉に乃恵が少し赤くなった。
「この家に連れてくるのも、家族の事を話すのも、乃恵だけだ」
「岡部先輩」
「22年かかってひねくれた心はそう簡単に治らないとは思うけど」
俺はそう言って笑う。
「でも、乃恵を好きだって事は分かるよ」
「・・・・」
「キスをしたいと思う。抱きしめたいと思う。そしてそれを俺だけがしたいと思う」
「岡部先輩」
「俺たちは二人とも愛って何だかよく分からないんだよな」
「・・・・はい」
「乃恵は無償の愛が愛だと信じていたのに
俺にはそれなりに有償を求めるし」
そう言って笑えば、申し訳なさそうに乃恵が謝った。
「無償でいられるなんて本当に崇高な人だけだと思うよ」
「・・・」
「俺は好きになった女の子と手をつなぎたい。キスをしたい」
「はい。私もです」
「俺たちは崇高じゃないからな」