接近-12
健太郎の目には完全に落ちた女の姿が映る。もう高い確率…いや、100%の確率で今すぐにでも紗英と肉体関係を結べる確信がある。やがて確実に得られる艶やかな女を前に健太郎は更に官能的な言葉を囁く。
「女って密かに新たな刺激を探してるものさ。旦那以外の男に与えてもらうセックスが女を熟させて行くんだよ。藤間はまだまだいい女になれるよ。今こそ女としての喜びをたくさん体験するのにいい頃だよ。こんなにいい体を全く使わないなんて勿体ないよ。ガンガン男に刺激を与えてもらうべき年頃だよ。」
紗英の体は火照っていた。もう旦那以外の男が自分なんかに振り向いてくれるはずがないと感じていた紗英の、でもそれでは何か淋しいとも感じていた気持ちを包み込んでくれるかのような言葉に女としての心が動く。
「でも…私みたいなオバサン…」
よく口にする言葉たが、その言葉に抵抗する気持ちは常に存在している。紗英がそういう言葉を口にするのは予測していた。
「オバサンじゃないよ、藤間は。見てるだけで男を狂わせるほどにいい女だよ。」
健太郎の言葉はいちいち顔を火照らせてくれる。
「た、丹野さんは…私を女として…」
聞きたい事を濁す紗英。健太郎の言葉は決まっている。
「見てるよ。正直言って…見るだけでムラムラする。」
「え…?」
そんな風に思っていただなんて考えもしていなかった。性の対象として見られていた事に驚き、そして悦びを感じた。健太郎はニコッと笑い顔を離す。
「自信持てよ、藤間。二度と自分をオバサンだなんて思うな?分かったか?」
「う、うん…。何か…、ありがとう…。」
そこまで言ってくれる健太郎が嬉しくて仕方なかった。自分をオバサンと卑下する事はないんだ…、そんな自信が生まれた。あまりに気持ちが高まり過ぎて紗英は思わぬ言葉を口にした。
「私を必要としてくれる人がいるなら…冒険する勇気が生まれたかも…。」
暗に健太郎を誘ってみた。
「冒険は大切だよ。」
さりげなく交わす健太郎。結局健太郎はその帰りに紗英を誘う事はなかった。しかしライン未経験の紗英に色々と教えお互い登録をした。健太郎にとってはすぐ抱く事以上の大きな収穫だった。
『今日は色々とありがとう。仕事から何からお世話になりっぱなしだね。このお礼は必ずするからね!』
紗英から来た初めてのラインであった。
「そのうちそのカラダをも世話してやるからな、藤間…へへへ。」
もう抱ける状態にまで紗英と親密に接近出来た事に健太郎は喜びを隠せなかった。