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あるカップルのSM2
【SM 官能小説】

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「あぁー、おいしかった」
「うん、お肉もやわらかくておいしかったね」
 まっさらになった食器を重ねながら二人は感想を言い合う。作ったものはなんの代わり映えもしないただのとんかつであったが、二人で作ったというエッセンスのおかげで何倍にも味覚をいい方向に導いてくれた。
「じゃあ、食器片付けておくから、シャワー浴びてきなよ。よかったら風呂も溜めるけど?」
「ううんシャワーでいい。ありがとう、じゃあ借りるね?」
「ういー」
 朱莉は春斗の提案を笑って謝絶し、鞄から着替えのパジャマを引っ張り出して風呂場に向かっていった。春斗はそれを確認すると、普段より幾分かキビキビ動いて二人分の食器と調理器具を洗浄、乾燥器にささっとかけた。その時の表情は、少し不気味に笑っている。
「ひっさしぶりのー、SM! やっちゃおうかなー? やっちゃおう!」
 薄気味悪い独り言を言いながら、スキップ気味に寝室へ向かう。
 セミダブルのベッドの下から、一度だけ実戦経験のある拘束具とアイマスクを取り出す。約一か月の休息期間を経て、二度目の実戦へ臨む。
「ぐふふふふふふふふ」
 不気味な笑いを繰り返しながら、春斗はマットレスに拘束具を纏わせ、アイマスクはそのそばに置く、ついでにコンドームをアイマスクの横に置いてから、クーラーのスイッチを入れて部屋を冷ます。拘束具の上から掛け布団を全体に掛けて隠匿して準備は終了した。隠したのは、始める前に気付かれてしまえばインパクトが半減してしまうからだ。
「あがったよー」
 朱莉の声が聞こえ、春斗はウキウキとまたスキップ気味に風呂場に向かう。すでにパジャマ姿になった朱莉が怪訝な顔をするが気にしない。
「壊れそうなキオクを〜、優しく抱きしめてた〜いんだ〜」
 ノリノリで歌を口ずさみながら浴室へ消えていく春斗に朱莉はよからぬ気配を感じて、寝室へと歩を進めた。
「やっぱり……」
 不自然に敷かれた掛け布団をそっとめくって朱莉はため息を漏らした。彼女の予想通り、黒い拘束具がマットレスに巻き付いている。
「さて、たまには春斗くんにも、羞恥心を味わってもらおうかな」
 そう、独り言をつぶやいた朱莉の表情は、春斗とはまた違ったベクトルで不気味だった。


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