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春斗のシャワーは朱莉のそれと比べてはるかに早く、十分ほどでサッパリと身体から湯気を立てて上がった。身体こそ丁寧に拭いたものの、短めの髪はそこまで丁寧には拭かなかった。湿り気を大いに残す髪の毛を、ドライヤーで一気に乾かす。その動きはやはり妙に軽い。
「朱莉さん。そろそろ寝ましょうか?」
冷えた麦茶を一杯飲んでから、春斗はわざとらしく敬語を用いてそれとなく行為を匂わす。その実、にやけそうになる顔を必死で面の下に抑え込むためであった。
「うん……」
ソファに座ってテレビを見ていた朱莉は、振り向くと顔を少し赤くして頷き、リモコンでテレビの電源を消してすっと立ち上がる。
「あ……、お茶一杯だけ飲んでから行くから、先に行ってて」
朱莉は自らのグラスに麦茶を注ぐべくソファに座りなおす。その姿に春斗は小さく微笑んで頷いてから一足先に寝室へ向かった。その背後では朱莉が普段見せない笑顔で微笑んでいた……。