and・・・last 1-6
手をつないだまま部屋に入り
パタンッとドアのしまる音で我に返った。
「乃恵。この前はごめん」
何の事に対して謝ってくれているのか
よく分からなかったけど、
なんだか今までの岡部先輩とは雰囲気が違った。
「私も。この前はごめんなさい。というか、私の場合は今まで私の信じていたものが
根底から覆された気がして、動転してしまいました」
「ん?」
どこから話していいか分からない私に
「ゆっくりでいいよ」
と、握る手に力を軽く込めた。
「あの・・・愛は無償だとか、岡部先輩が私に愛を返してくれなくてもいいだとか。
本当に生意気なことを言いましたが・・・」
「うん」
「それは間違いだったと気がつきました」
「うん」
「愛は・・・少なくとも私の岡部先輩への愛は無償ではありません」
「・・・・」
「キスもしたいですし、手もつなぎたいです。
今こうやって手をつないでくれるだけでドキドキします」
「うん」
「愛している・・・は無理だとしても好きだと言ってほしいです」
「うん」
「そんな、夢みたいなことを願ってしまいます」
「ごめんなさい。それは無償とは言わないと思います」
「乃恵。俺はそれが普通だと思うよ」