and・・・last 1-5
岡部先輩は小さい声で
「出ようか。俺んチでゆっくり話そう」
といい、私の荷物を持つと、いまだに私たちを唖然と見ていた女性たちに
「悪いな」
と声をかけてカフェを出た。
大学を出て、大通りからタクシーに乗る。
「えっと岡部先輩。こんな贅沢は・・・私電車で大丈夫です」
涙を拭いてそう言えば
岡部先輩は私を抱き寄せて
「乃恵の泣いてる顔、他の奴に見られたくないからね」
と笑った。
大人しく、岡部先輩の言うとおりにして、
タクシーは少し走って岡部先輩の家に着いた。
「カフェで子羊ちゃんが泣いてるぞーって山田に言われて行ったみたら
乃恵は泣いてなくて、俺たちの清らかな関係を強気に暴露しているところだった」
クックックと笑いながら鍵を開けた。
「あの・・・」
「この家はもともと嫌いなんだけど。
この前乃恵に言い逃げされたから。もっと嫌いになっちゃうかも」
「ええ?」
二人で靴を脱いで、小さく「お邪魔します」と上がって
向きを変えて座って靴をそろえる。
そんな私を、しゃがんで岡部先輩が覗き込んだ。
「なんですか?」
「いや。育ちってそこらじゅうに出るんだな。と思って」
そう笑うと、私の手を取って階段を上がった。