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【スポーツ 官能小説】

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〜 日曜日・雑談 〜-3

 何というかB22番先輩の話を聞いて、私の場合に似ていると思った。 

 自決、或は命を賭けた何かを要求される。 決断したつもりでも、土壇場になって身体が動かなくなる。 先輩に背中を押してもらう。 結局安全装置があって、茶番なことが判明する。 背中を押した罪により、先輩が過酷な指導を受ける。

 B29番先輩もまた、私達が体験した寮監のチェックを話した。 天井からネックハングを要求されたことを聞いて、B22番先輩は驚いていた。 何回も私を指差して、このコが本当にできたのかと聞かれた。 B22番先輩曰く『絶対死ぬとわかってる行為は、並の寮生でも受け入れられない』らしい。 そういわれても、あの時の私は頭が真っ白だったから可能だった。 改めて指示されたとして、出来るかといえば……正直無理だろうと思う。 

 寮長から拳銃を渡された点にも、B22番先輩は驚いていた。 B29番先輩曰く、

 『きっと命が助かるように、1発目は空にしてくれていると思った。 ドキドキしたけど、心のどこかでは安心していた。 寮監の手元が狂って失敗していたら、その時は私もお終いだけど、その時はその時で諦めるしかないよね。 こういう時って大体無事だし』

 とのこと。 学園は過酷で現と黄泉が隣り合わせだが、どうやら命を奪うことは稀なようだ。 先輩の口振りからして、寮監は生徒に絶対的な命令権がある一方、生徒を突き落すことは少ないのだろうか。 

 B29先輩は笑っていた。 あの時の恐怖が蘇えり、私は爪から血が滲むまで拳を握りしめた。 諦めると簡単にいうが、スイッチを押せば確実に助かる私に対し、偶然で命を奪われかねない状況を、B29先輩は受け入れたのだ。 その恩は、私は絶対に忘れてはいけないと思う。 心の底からそう思う。


 ……。


 徐々に緊張がほぐれていった。 私たちが食事を終えても、4人のお喋りは終わらない。 そのうちチェックを終えて食堂にやってくるペアが増え、あちこちで四方山話に花がさく。 寮にとって今日は特別な日らしく、新入生が喋っても咎められないどころか、話したこともない先輩から質問される。 おずおずと答えたり、挨拶したりするうちにジワジワと実感が湧いてきた。 入寮して1週間。 もしかしたら、今日この日をもって、この学園の『史性寮』の1員に、私達はなったといえるんじゃないだろうか。 『なることができた』『なってしまった』というよりは、ただ事実として『なった』気がする。

 史性寮。 私達が、これから続く学園生活を上下関係の中で消化する共同体。 先輩たちは単に怖くて不条理なだけではなかった。 今日みたいに、時として優しさも見せてくれる。 私達も、ごく限られてはいるけれど、演技ではなく本心から感謝の言葉を口にできる。 

 夕食、入浴、就寝するまでの流れは、これまでの1週間と変わらない。 床に這って食事をしたし、ブリッジの姿勢で入浴し、先輩の垢を舌で清めた。 寝具や下着を交換し、先輩の排泄を受けとめた。 けれど私の心の中で、何かが少しだけ変化していた。 辛い気持ちの中にあって、ほんの少しだけ灰色じゃない部分が拡がったような、そんな気持ちが芽生えていた。



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