〜 日曜日・放置 〜-1
〜 29番の日曜日 ・ 放置 〜
「んっ……しょ、んしょ、んっ……」
ザッ、ザッ、ザッ。
22番が去った砂場の中央。
平手で砂をすくい、脇によける。 もう一度手ですくい、脇によける。 一度私が放尿し、さらに先輩が放尿したせいで湿り気を帯びた砂が、アンモニア臭を漂わせながら、私の両脇につみあがってゆく。
「んっ……ふぅん……」
ザッ、ザッ、ザッ。
どれくらい掘り続けただろうか。 既に穴は深さ1メートルを超えた。 屈めば頭まで隠れるほど、膝立ちなら顔だけ地上に出るくらいになっている。
「ふう……」
ここらへんが頃合いだ。 私は頭の中で先輩の指示を反芻する。
首から下が隠れるまで穴を掘って、そして……。
「んっ」
下腹部に力を込める。 ぷしっ、チョロロ、チョロリ。 膀胱にたまった僅かな尿が、穴の底に小さな水溜りをつくる。
先輩に言われたとおり、穴の底で尿をした。 次は……。
「ふぅんっ!」
半ばヤケクソで息んでみせる。 穴の底で拡がるお尻の穴。 1ミリたりとも笑いはない。
「んっ、んっ、はぁぁ……」
むりっ……みちっ、みち、むり……ブリュッ、ぶりぶり、ぶりっ。
自分の手で掘った穴に響く、これ以上ないくらいはしたない破裂音。 ぷうん、生々しい香りと共に、暖かい塊が膝をついた足をつたう。 やや柔らかい便塊は、太腿からふくらはぎにかけて、肌にミッチリへばりつく。
これも先輩の指示だ。 自分で砂場に『トイレ』を掘る。 『トイレ』なんだから、その中で大も小も排泄する。 とうとう私は『便』と同列扱いされるまで堕ちてしまった。
「ハイ!」
異臭が漂う穴から顔だけだし、私は先輩に合図をする。
背後で先輩が動く気配。
「脇を締めて、腕はきをつけね」
「ハイ!」
ザザザー。
私が掻きだした砂が一気に流れ落ちてきた。 穴と私の隙間が砂で埋まる。 顔以外すべて埋もれてしまった私の周りを、ガシガシガシ、先輩が力強く踏み固める。 手を動かそうとしてみたけれど、これっぽっちも動かせなくなっていた。 首もほとんど埋まってしまって、見上げることも、振り返ることもできない。 ただ前だけを見つめる、完全な生き埋め状態になった。
「口を開いて舌をだす」
「ハイ……ふぁう」
頭上から伸びた先輩の手が、伸ばした舌の上に、そっと親指大の石ころを置く。
「それじゃ、またね。 せいぜい、いい子にしてなさい」
「……ふぁい」
舌をピンと伸ばしっぱなしともなれば、まともに答えられるわけがない。 私の、文字通り舌足らずな返事を待たず、
ザッザッザッ。
先輩の足音は砂を刻んで遠ざかって行った。
「……」
舌と唇の隙間から外気が入り、徐々に乾きはじめる口腔粘膜。 石ころの重みに負けないよう力を込めれば、あっという間に痺れはじめる赤い舌。