〜 土曜日・拡張 〜-1
〜 2号の土曜日 ・ 拡張 〜
「59番、報告します! 爪先からだらしないオケツの穴まで、は、87センチと4ミリです! 申し訳ありません!」
首輪が緑色に点灯する。
「よろしい。 次、49番。 貴方の尻周りについて報告しなさい」
「ハイ! 49番、報告します! ブリブリしたオケツ周りは84センチ3ミリです! 申し訳ありません!」
ピコン。 明るく灯る緑色。
「よろしい。 次、50番。 貴方の右乳首について報告しなさい」
「は、はいっ! 50番、報告します! 触ったらすぐ固くなる、は、恥ずかしい右乳首はッ、直径1センチ1ミリ、高さ3センチ2ミリ! フル勃起時直径1センチ5ミリ、た、高さ……高さは……」
シーン。 身体測定前と同様、体育館の中央に集まったCグループ生からはしわぶき1つ聞こえない。 集団の前では腕を組んだ12号教官が冷やかに直立する生徒を睥睨している。 立たされた生徒はといえば、途中までは大きな声だったのが、今や蒼ざめて消え入りそうに震えていた。
「た、高さ……うう……」
「まだ待たせる気?」
「高さ、3センチ5ミリです! も、申し訳ありません!」
目をギュッとつぶって叫ぶ、50番と呼ばれた巻き毛の少女。 首輪の様子に変化はない。
「ふう。 本当……ッ、に申し訳ないコだわ。 自分の乳首がどんな存在か分からないだなんて、恥ずかしい以前の問題でしょう」
わざとらしくため息をつくと、12号教官は胸元からキラリと光るものを取り出した。 私はそれが何か知っている。 12号教官の指導の十八番だ。 1組の生徒はみんな知っているのだろう、50番がこれからどうなるのか察してか、薄笑いを浮かべている。 対照的に2、3組は唇を結び、背筋を固く強張らせている。
「ひっ……も、申し訳……!」
「謝るような次元じゃあません。 貴方は1組の恥なんだから、恥部なら恥部らしく、おバカはこうなるっていう見本におなりなさい」
「うう……もう嫌ぁ」
「なんですって? 何かいった? こういうとき、貴方が口を利いても許されるんでしたっけ?」
「あ、な、なんでもありません! ダメな私に指導をお願いします……!」
顔を仰け反らせ、胸をつきだす50番。 さっき振るわれた打擲の痕、もっと前についたであろう無数の痣が痛々しい。 そんな痕跡の中央で小さく膨らむ胸の丘を、12号教官の大きな掌が容赦なく包む。
「……ッ」
括れた乳房に、50番が声にならない呻きをあげた。
「皮膚には所々隙間が合って、そこにピッタリ納まった針は傷をつけないんですね。 もちろん皮下組織の痛点は刺激しますから、とってもとっても痛いんですけど、慣れれば皮下脂肪が熱くなってきて、血行促進に役立つんですよ♪ いずれ2、3組の皆さんにも体験させてあげますが、まあ、すごく痛いツボと思ってもらって結構」
「いっぎっ……!」
先端に膨らむ乳首の中央。 摘まんだ極小の針が、ツプツプと音も立てずにめり込んでゆく。 鍼灸に造詣が深い12号教官は、最少の労力で人体に針を打ちこむ玄人なのだ。 ただ、本来の針の使用法とは違い、効果的に痛みを与えることが主眼になっている。
「ひい……ひいぃ……」
グリグリ、クリクリ。 乳首をしこらせながら、ゆっくり針で円を描く。 ということは、針の先端は50番の乳房に溜まった脂肪を掻き回すことになる。
3組の生徒は大半が俯くか視線をそらし、黙って悶える50番を正視できていなかった。 未知の痛みを想像して、自分に置き換えているんだろう。 もしそうであれば12号教官の狙い通りだ。 また1つ自分への恐怖を加えておけば、学年指導もしやすくなる。
ただ、私の生徒たちは誰が顔をあげていた。 痛みを想像して顔を顰めてはいても、目を閉じるものもない。 考えてみれば針で刺される以上の痛み、苦しみ、さらには補習まで経験してきた面々だ。 今更針に耐えられないほどヤワなメンタルはしていないということだろうか。
「もう金輪際間違えないように。 放課後キッチリ測定しなおして、記憶するんですよ」
「……は、はいぃ……ご指導あり、ありがとうございました……!」
ツプリ。 鮮やかに赤くそまった針を引き抜く12号教官。 50番はといえば、抜かれたときによろめいたものの、胸自体からは失血もなく、傷跡は傍目にはないように見えた。
「いいですか皆さん。 今日測定するデータは、いつ、いかなるときも記憶するべき貴方たちの最重要項目です。 答えられないなんてないよう、間違えるなんて有り得ないよう、しっかり記憶しましょうね」
「「ハイ!!」」
一斉に返ってきた答えに満足した様子で12号教官が続ける。
「そろそろ先輩方も次の測定準備が出来たようですね。 では、続いて皆さんの外部と内部を繋ぐ器官、つまり『穴』の機能を確認しましょう。 1限の測定と同じ要領で、空いている場所に並んで、すべて測定した人から集合場所に戻りなさい。 全員、移動」
「「ハイ!!」」
ザッザッザッ。
背筋を伸ばし、手を大きく振って行進する生徒たち。 測定の疲れを顔に残しつつも、動きの機敏さは衰えていない。 彼女たちの先には、測定用具を持ち替えた係の面々が神妙な顔つきで座っている。