Thank you.-5
しばらく乃恵が黙って俺をじっと睨んでいた。
その後1つ小さなため息をついて空気が変わった。
いい加減少し落ちついて来たか。
「あのな。確かに鬼畜かもしれないけど。
そう面と向かって言われたのは初めてだけど。
俺は無理やり、セックスしてないぞ?」
「・・・・」
「女の子だって了承済みだ」
「・・・・」
「女の子だって俺を愛している訳じゃない」
「・・・・」
「後腐れがなくて、気持ちのいいセックスを求めている女の子もいるんだよ。
乃恵が知らないだけ」
なるべく優しい声で、内容的にはショックなことを
ジッと視線を合わせて静かに言う。
「でも・・・・」
「女の子の全員が、乃恵と同じ考えじゃない」
「・・・・」
ひどいことを言っているとは分かっていたし
乃恵がショックを受けることは分かっていた。
「でも、少なくとも・・・・
俺は乃恵と付き合おうと決めた日からは誰の事も抱いてない」
「・・・・それは、なぜですか?」
「さぁ?これでも貞操を守っているつもりだけど?」
少し不真面目におどけて言ったら
乃恵は思い切り下唇をかみしめた。
「乃恵・・・切れるだろ」
その唇を親指でそっと解放してやる。
「乃恵が嫌がることはしないよ」