宿題-1
あたしは一応女だって自覚はあるし、誰がどう見たって男には見えない。
だから、今日も朝からメィク、髪のセット、洋服選びから香水まで気を使う。
たかが、バイトに行くだけなのに。
あたしは女を捨てるには早すぎる。
『お前さ、メィクもぅちょっと薄くしたら?』
狭くて小さな控室。
その中にいっぱいのタバコの煙がょく見える。
あたしはタバコを吸いながら外を見つめた。
青くて、真っ青で。
飛んで行きたい。
『今のまんまでィィじゃん』
窓から見える空に向かって煙を吐く。
『メィク濃すぎ』
彼のいつもの口癖を背中で受けた。
ここのバイトはもぅ1年半になる。
ここまで続いたのはここが初めてだった。
彼がいたからなのか、ただたんに自分に合っているからなのか。
いつも目線の先には彼がいた。
彼と目が合うと彼は言う。
『お前さー…』
メィクを薄くしろ、エクステを取れ、髪が傷みすぎ、もっと色を落とせ、露出を控えろ…
あたしは今までそんな事言われた事もなかった。
誰も見てくれていないと思っていたから。
でも彼は見ていてくれてるって事なの?
『また今日もすげぇ目力ゃな』
タバコに火をつけながら笑う。
あたしも笑いながら言った。
『うるさい』
だって、変える訳にはいかないよ。