窓際の憂鬱-9
「大丈夫か?」
「いた・・・ぃ・・」
ため息で吐息に応えたのはあの人との言葉のやりとりに似ていたような気がした。
「処女だったのか?」
私は黙って頷いた。本当はといえば、それはなぜか悟られたくなかった事だった。
「大丈夫。ゆっくり・・して・・・」
今思えば、ずいぶん恥ずかしい言葉だった。
膣内の硬さに慣れてくる頃には羽田は小刻みに体をぶっつけた。
その体を背中から支えるように抱き、もうひとりの子がおっぱいを揉む。
なんだかもう分からないけど、羽田よりはその扱いが上手に思えた。
膣孔(なか)に射精されたことが分かった。
もう、体がどこかに強い力で引っ張られて私に何かを考える力は残っていない。
交代して、もうひとりの子が挿し込む。
アソコの孔がちくわの穴になってしまったみたいな感じがした。
たぶん、それでも私はイッたんだと思う。脱力感と激しい痙攣が交互に体を駆け巡る。
二人分の精液がアソコから流れ出す。
羽田が差し出したハンカチでそれを拭う手は震えていた。
「ここから離れる事にしたの。」
彼女が零した言葉に私はその顛末を予期していた雰囲気はあった。
それからおかしな言葉だと思った。
ここを離れるじゃなくて、ここから離れる・・・言葉のアヤというものが外国語みたいに感じた。
私はなぜ?とか、どこに?とか、そういった事は訊く事ができずに何か別の言葉を返した。
何を言ったのか憶えてはいない。ただ、それに応える言葉がなかったのだった。
下着の中でだらりと精液はしたたり、羽田は境内でりんご飴を買ってくれた。
別に欲しいわけじゃなかったけど、私はそれを手に持ったまま一口もかじらなかった。
ともかくお祭りの音と賑わいの中でセックスを経験してみたけど、それで世界観とか人生観みたいのが変わるというわけではなかった。
それよりもまた羽田たちが誘ってきたらどうしよう。
たとえば日暮れにあの人がいた場所などで待ち伏せされてたりとか、携帯は分からなくても、うちの電話番号なら分かるはずだ。
「仏具の花澤」で調べたら、すぐ分かる。
そんな事思いながらも私はそれを待っているのかも知れない。
羽田の彼女になるとかという気は今はないけど、そのうち気が変わるかも知れない。
「ここから離れる事にしたの。」その言葉は案外それで合ってるのかも知れないと思う。
それは誰か「を」好きになる。と誰か「が」好きになる。の違いみたいなものじゃないだろうか?
どう言えばいいのか、セックスと恋愛感情とかってものは深いところでまた違うような気がするのだった。
ー完ー