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悪魔とオタクと冷静男
【コメディ その他小説】

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部長と刺客と冷静男-4

「ふむ、特に異論も無さそうだね。それでは気楽に聞くが、――我々はどこの部を潰した方がいいと思うかな? 私としては帰宅部が驚嘆に値するほど邪魔なんだが」
「気楽に不穏当な発言をするなっ! あんたやっぱり最悪だなっ」
「おや栗花落くんが怒鳴っている。これはめずらしいね? 皆の集、存分に保存されい!」
 長谷部は言うなり素早く携帯を取り出し、五十嵐とつばさも無駄に楽しげにそれに続く。写真に撮られるのはあまり好きじゃない。うわ、と思って止めようと手を伸ばすが遅く、届く前にシャッターの電子音が何度も鳴った。
 だが長谷部たちはあまりいい表情をせず、
「む、ブレてしまった。もう一度、もう一度シヤッターチャンスを!」
「俺の位置からは背中しか撮れなかったしなあ、向き変えようぜ?」
「照れないでもう一回! わあ目付き悪いー、無愛想ー。だから、ね?」
 うわムカつく。特に三つ目はただの悪口だ。
 しかしここですぐに脊髄反射的に怒ったら大人ではない。僕は精神年齢が小学生並みのこいつらとは違うんだ。大きく大きく深呼吸してから、机に強く拳を叩きつけた。意外と大きな音が出て、皆が何事かとこちらを注視する。それを確認して少し間を空け、
「……お前らに言いたいことがある」
 ひと息、
「迷惑だ。解りやすく区切って言えば――、う・ざ・い」
 できる限りの笑顔付きで言ったら一瞬で静かになった。そしてすぐに三人はヒソヒソと、
「いっちーが、あのいっちーが笑った……!」
「ああ、狂気だ。し、しかし私には殺すと聞こえたが気のせいかな?」
「……いや、俺にもそう聞こえた。ってか今も視線がそう言ってる」
 微妙に怯えながらも好き勝手言う。なるほど、そんなに僕の笑顔はめずらしいか。そうかそうかコノヤロウ。
 ついでに、と隣へ視線だけ向けて、
「で、遠矢。お前は何やってんだ」
「ええ、わたくし最近、動画に目覚めまして。お気になさらず自然体でお願いしますね? ご所望なら背景を宇宙空間にしたり、虹色の光線やナレーション、効果音も編集時にお入れしますよ」
 ビデオカメラを構えながら阿呆が言う。……すぐ真横で。
 しかし近い。うっとうしいぐらい近い。
「もっと離れろ阿呆」
「それはつまり、離れれば撮影してもいいということですね? すなわち映りたがり、と。撮ってほしいなら素直に言ってくださればいつでも――」
 とりあえず無言でカメラを取り上げて、僕の鞄の中に叩き込んだ。
「ああっ、そんな、返してください! その中には貴重なマル秘映像が」
「……どうせろくなモンじゃないだろ」
「いえ、主に幸一郎さんの着替えや赤面シーン、他にもアレやコレや、簡潔に言えば嬉し恥ずかし映像がギッシリ」
「ストーカーかお前! 没収だコレはっ」
「そんな、今のはほんの冗談ですよ。だから落ち着いてください」
 もういやだ。この僕を取り巻く構図はいったい何時の何が悪くてこんな右斜め上に曲がってしまったのだろうか。昔はこんなではなくで、もっと閑静で変化がなくて平淡で無味乾燥だったはずだ。それが今はどうだ。騒擾で不安定で刺激で溢れて、苦労が耐えないじゃないか。
 ……考えるまでもなく完璧完全確実に間違いなく文学部(と書いて馬鹿どもと読む)のせいだが。


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