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百合の香水
【同性愛♀ 官能小説】

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百合の香水-2

 わたしはざばりと湯船から出ると、のぼせそうになって火照っている頬にバスタオルをあてた。
 先輩のことを考えているとつい長風呂になってしまう。

 鏡に鎖骨が浮き出た細身の女が映る。
 もう少しボリュームがあれば色っぽさが出るかもしれないのに。
 先輩に憧れて伸ばしている髪も、もっとコシがあって艶もあれば自信がつくのに。
 わたしってほんとうに何の魅力もない女。
 こんなわたしが先輩をわたしだけのものにしたいなんて──烏滸がましい。

 わたしはため息をつきながらスマートフォンを確認した。
 メールがきていた。

《今度の土曜日、わたしのおうちへ遊びに来ない?》

 先輩からのお誘いメールだった。
 わたしはイエスの返事を何度も確認して送った。指が震えた。

 先輩のおうちに遊びに行く!
 なんてことかしら。粗相のないようにしなくっちゃ。
 何を着て行こう?
 先輩にださいと思われないようなセンスの良い格好を考えなくちゃ。
 あぁ、どうしよう。緊張する。
 先輩のおうちに遊びに行けるなんて……。夢みたい。

 わたしはスマートフォンを持ったままアレコレと想像し、──大きなくしゃみをした。


***


「お邪魔します……」
「どうぞ。今両親も姉も出かけているから、そんなに緊張しなくて大丈夫よ」
「は、はい……」

 先輩のおうちはまるで少女漫画の中から飛び出してきたかのようにオシャレで綺麗だった。
 灰白色とレンガ調の外壁も、重厚そうな木製のドアも素敵で、わたしは思わずため息を漏らしてしまった。
 先輩にぴったりのおうち。
 お玄関はウッディな感じの上品な香りがして、出してもらったスリッパはとてもふかふかだった。
 
 先輩のあとについて階段をのぼる。
 太陽光がたっぷりと入っていてとても明るい。
 先輩はコクーンフォルムが可愛いアイボリーのミニ丈ワンピースに黒のソックス合わせ、ライトグレーの大きめストールを羽織っていた。
 先輩の細さと白さが際立つ、素敵なコーディネートだと思った。

「お部屋にもう紅茶のセットを用意しているの。こっちよ」

 先輩が縦に入った木目が綺麗なライトブラウンのドアを開けた。

 先輩のお部屋!
 わたしは軽い眩暈を覚えた。

 ペールグリーンやラベンダー、クリームやライトブラウンなどのナチュラルな色合い。テディベアやたくさんの本が並ぶ背の高い本棚。オフホワイトのベッド。

 わたしがぼんやりとそれらを眺めている間に、先輩が紅茶を淹れながらお砂糖はいる?と聞いた。

 部屋の真ん中に置いてあるテーブルの、角と角に座って先輩に向き合う。
 ホワイトにブルーの花柄のカップ。華奢な持ち手を緊張して持ちながら、わたしは先輩と同じように紅茶をひとくち飲んだ。

「このカップね、一番上の姉のお店で買ったの」
「そうなんですか、素敵なカップだなって思っていたんです」
「パイナツプルビルっていう、変な名前のビルの一階にあるお店なんだけど、あそこに並んでる香水瓶もその姉のお店で買ったの」

 先輩がドレッサーの隣のウォールラックを目で示して言った。
 色とりどりのガラスの香水瓶たちがずらりと並んでいる。
 中世のヨーロッパあたりを舞台にした映画に出てきそうな豪奢な香水瓶たち。

「素敵」

 呟いたわたしに、先輩が嬉しそうにアンティークの香水瓶を集めるのが趣味なのと言った。


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