同窓会は恋の予感!?-1
地元を離れ、はや5年。
ウン十年ぶりとか、そんな期間が空いていたわけではない。
成人式だってつい数年前にやったばかりだし、帰省の度に地元に帰っていたし、同級生とはたくさん顔を合わせていた。
それでも、青春時代を共に過ごした仲間と会うのは、いつだって心が踊る。
都会に馴染んだつもりでも、やっぱり俺は故郷が好きなんだなあと、しみじみと手に持った一枚のハガキを眺めた。
◇
「取手、やけにご機嫌だな」
デスクから社長が声を掛けてきた。
とは言っても、目線は3DSから離れないまま。
なんでも、最近買った「妖怪ウォッチ2 真打」というソフトにはまっているらしい。子供かっ!
グレーの上下スウェットを身にまとい、デスクの上に脚を乗せ、備前焼のマグカップに注がれたコーヒーを飲みながら、子供向けゲームに夢中になるその姿は、とても社長には見えなくて、ニートのようだ。
ビシッとした格好をすれば、すげえいい男なのに、この人は普段はいつもこう。
こんなだらしない格好をした人が、元・売れっ子AV男優のずん田もち夫なんだもんなあと、こっそり横目で眺める。
そんなずん田もち夫だが、現在はAV男優を引退し、素人向けAV制作会社コスタ・デル・ソルの代表取締役社長をやっている。
そして俺は、そこの製作スタッフをしているってわけ。
「取手くんは、今度同窓会があるんですって」
言いながら、俺にもコーヒーを運んで来てくれたのは、我が社の紅一点・傳田さんだ。
俺が甘党なのをちゃんと覚えていてくれて、いつも砂糖とミルクをあらかじめ入れておいてくれる、気の利く美人秘書。
ああ、今日も黒いタイトスカートから伸びた長い脚が眩しい。
コスタ・デル・ソルには、他にもカメラマンの井出さん、音声の多田さんがいるけれど、今日は彼らは現場。
うちの会社は個人向けAV制作会社だけど、ひっきりなしに依頼があるわけじゃない。
徐々に仕事は増えてきているらしいけど、それ一本でやっていくにはまだまだ厳しいらしくて、だから外注として、俺を含む井出さん、多田さんの映像部門スタッフは、現場に派遣されることが多い。
お子さんが私立中学に進学し、学費の捻出に躍起になる井出さんや、暇をもて余すのが嫌いな多田さんは、積極的に仕事を取りに行ってるけれど、まだまだ若い独身貴族の俺は、日々の生活さえ保障されていれば十分なので、基本、のんびり仕事をする派。
天気のいい、穏やかな昼下がり。
こんな日は事務所でのんびりお茶をするのが、至福の一時なのだ。