同窓会は恋の予感!?-6
「いや〜、こんな中途半端な時期に同窓会なんて、人が集まるのか心配だったんだけど、さすが3年C組の団結力は素晴らしいな。かなり参加率いいぞ。しかも、今回はレアキャラも来てくれるんだぜ」
地元で介護の仕事を頑張るツヨシは、今回の同窓会の幹事の一人である。
そんなツヨシは、わずかに髪の色を明るくして、ちょっとゴツめのシルバーのネックレスなんかして、田舎の高校生から脱皮してしまった。
その姿に、素朴で優しい当時の奴までいなくなってしまったような気がしたが、デニムのポケットからクシャクシャになった名簿を見ながら、嬉しそうに話し掛けてくる姿は、学生時代となんら変わらない。
その一生懸命な姿が、実家で飼ってる柴犬のテツに似ていて、噴き出しそうになった。
「でな、そのレアキャラってのが……」
俺が笑いを堪えているのに気付かないツヨシは、突然ニイッと茶化すような笑みをこちらに向ける。
今でこそ色気づいたツヨシだけど、元々は俺と同じ、平凡なモテない男子高校生。
男友達ばかり充実していたツヨシのネットワークじゃ、期待するようなレアキャラは浮かばなかった。
せいぜい、教室の隅でアニメやゲームの話題で盛り上がるオタク君グループや、勉強以外に興味がないガリ勉地味子ちゃんグループの誰かだろう。
特段関わることのなかった奴等が来たって、テンションは上がんねえな。
ふわあっ、と欠伸をしながらお情け程度にツヨシの顔をチラッと見ると、奴はオホホと笑いそうな感じで片手で口を抑えながら、
「村主雅(すぐりみやび)さんだよ、雅さん。お前、雅さん大好きだったもんな」
と、言った。
途端に、歩みがピタリと止まる。
そして、頭の中に一気に雪崩れ込んでくる、彼女の笑顔。
色白で、細くて、小さくて。サラサラの黒髪ストレートを揺らしながらクスクス笑うあの姿。
彼女の姿を思い浮かべるだけで。いや、名前を聞くだけで、身体がカッと熱くなる。
そう、ツヨシの言うレアキャラ・村主雅さんは。
――ずっと憧れていた、俺のマドンナだった。