同窓会は恋の予感!?-5
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電車を降りた瞬間、空気が違うような気がして、無意識に深呼吸してしまう。
都会の排気ガスに塗れた空気とは違う、田舎特有の青臭い自然の匂い。
「相変わらずの田舎だなあ」
なんて一人ごちた俺は、電車内で座りっぱなしだった身体を思いっきり伸ばした。
俺の故郷は、新幹線で1時間程度の距離。そこから在来線に乗り換え1時間。
帰ろうと思えばいつでも帰れる距離が、かえって帰省の機会を逃していて、そういや今年の正月以来、帰ってなかったことに気付く。
しっかし、相変わらず活気ねえなあ。
駅を出て、目に飛び込んできた光景に
思わず苦笑い。
新しい店ができてたり、学生時代に足繁く通っていた店が潰れてたり、こんなのどかな街でも大なり小なり変化はあるとは言え、都会で暮らしている俺の目から見れば、時が止まったのも同然で。
のどかで、寂しくて、退屈だったあの街のまんまで、それがちょっぴり嬉しかった。
駅を歩いてすぐそばにある、ファーストフードの店の前で、見慣れた街の間違い探しでもするかのようにキョロキョロしていると、
「取手ー!!」
と、感傷に浸る俺を現実に引き戻す、しゃがれた声が遠くから聞こえてきた。
見れば、高校からの悪友・ツヨシが相変わらずの人懐っこい笑顔で手を振りながらこちらに駆けてきた。
「おぉ〜、ツヨシ! 久しぶりだな」
久しぶりと言っても、コイツとは地元に帰る度に会っている。
帰省すると、真っ先にツヨシに連絡して、駅に迎えに来てもらうのがいつものパターン。
今回も、親に顔を見せるより早くツヨシに連絡したのは、地元に帰ったその足で同窓会に向かうからであった。