同窓会は恋の予感!?-3
「今月末の土曜日か」
社長がカレンダーを眺めながら呟く。
その様子をまともに見れない俺は、膝の上に置いたハガキを見つめるしかできない。
と言うのも。
「その日は撮影が入ってますね。常連の丸木社長の依頼です」
傳田さんが俺の背後から、よく通る声で言った。
そうなのだ。
素人向けAV制作会社なんて胡散臭い会社だが、それなりに常連客もいるわけで、先の丸木社長とは丸木建設のトップ。
金持ちというのは、たとえ結婚していてもそれなりに女がいるもんで、最近は秘書の女の子を愛人にして、それは過激なセックスを俺達に撮影させていた。
基本的に不倫カップルは撮影しないのだが、この丸木社長を紹介してきたのが、うちの御代田社長がAV男優時代に所属していた事務所の社長。
なんでも、御代田社長のお父さんに金を貸してたヤミ金の社長でもあって、いろんなしがらみがあって、この依頼を受けるしかなかったのだとか。
それでも、当の丸木社長は特段横柄でもないし、金払いもいい。
しかも愛人の女の子がこれまためっちゃくちゃ可愛くて、そんな可愛い女の子のイヤンバカンなシーンを拝ませてくれるから、不倫というのを除けばかなりの上客なのだ。
そんな大事な撮影が重なっている日に休めるはずがない。
わかっていても諦めきれなくて、ハガキをニヤニヤ眺めていたさっきの行動を早くも後悔し始めていた。
「取手?」
「わ、わかってますって! ただ会社のスケジュールと確認するためにハガキを見てただけですから。丸木社長の撮影なら抜けるわけにはいかないですしね!」
「…………」
「いざとなりゃ、撮影終わってから新幹線に乗るってこともできますし! みんな飲んべえだから二次会、三次会までやってるはずだし、ほら、主役って遅れて登場するもんでしょ……」
「取手」
皆まで言い終わらないうちに、社長が遮る。
その声が思いの外柔らかくて、思わず顔を上げた。