同窓会は恋の予感!?-2
傳田さんの言葉に、社長が初めて反応したように顔を上げる。
「お前、まだ23だろ? 同窓会ってのは、成人式とか厄年とか、そういう節目の時にやるもんじゃないのか?」
「社長ー、同窓会ってそんな堅苦しいものだけじゃないんですよ。集まりたいから集まる、それだけッス。それにこの時期は、大学卒業した奴等も無事就職して、一段落する頃だし、近況報告するにはベストだと思いますよ?」
「……そうなのか。いや、オレさ。そういうの行ったことがなかったからさ」
小さく笑った社長に、ギクリとする。
……悪いこと言っちゃったかな。
社長の寂しそうな笑顔が気まずくて、俺はこっそり目を逸らした。
社長は今でこそ、こんな呑気にゲームなんかやっているが、実は相当な苦労人。
実家の事業が失敗して、莫大な負債を抱えながら身体を売る仕事、すなわちAV男優になったのだ。
男のロマンがつまった仕事と思われるが、そんな甘い仕事じゃない。
現場は一日2本は当たり前、体力が勝負のこの仕事は、単にセックスが好きというだけでは務まらない。
気分が乗らなくても無理矢理勃たせて、疲れた身体に鞭打って、腰を振り続けなくてはならない。
それだけじゃない、プライベートを投げ打つ覚悟がないと、やっていけないのだ。
だいぶ世間に認知されてきたAV業界だけど、まだまだ白い目で見てくる人が圧倒的なのも、事実。
昔からの友人からは縁を切られたかもしれない。
街を歩いては後ろ指を指されてきたのかもしれない。
そんな人生を送ってきた社長が、同窓会に行ったことがないってのは、ごく自然なことで、配慮のない自分の言葉に、ほぞを噛んだ。
「で、いつなんだ?」
「へ?」
「同窓会だよ。その日は休みたいんだろ?」
「あ、で、でも……」
「えーと、同窓会は○○月○○日ですね」
「ちょ、傳田さん! 勝手に見ないで!」
罪悪感で遠慮がちになってしまった俺の後ろから、ハガキを覗き込んだ傳田さんが同窓会の日程を勝手に読み上げてしまった。